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2002年9月号(B-brainコーナー)

アカマイ・テクノロジーズ・ジャパン 代表取締役社長:内藤 眞氏
1万3000台のサーバー資産が強み
CDNをネット企業のライフラインにする

アカマイ・テクノロジーズ・ジャパンは、米国最大のCDN(Content Delivery Network)サービス事業者であるアカマイ・テクノロジーズとソフトバンクグループが、2001年4月に日本に設立した合弁会社である。インターネットビジネスの競争の焦点が、ブロードバンドインフラの活用からコンテンツやその配信環境の質的向上へと移りつつある中、CDNサービスの先駆者である同社の事業戦略について、内藤眞社長に聞いた。

Profile

内藤 眞氏(ないとう・まこと)
1978年慶應義塾大学工学部卒業。同年4月ソニー入社。85年より英ソニーに6年間、95年より米ソニーに3年間駐在。その間、ソニーの映画音楽部門を担当するかたわらSony On-line Ventureを設立。98年の帰国後、ソニー経営戦略担当部長就任。次世代プレステの開発もリード。2001年ソフトバンク・ブロードメディア経営戦略担当執行役員兼アカマイ・テクノロジーズ・ジャパン取締役副社長・COO。2002年1月代表取締役社長に就任、現在に至る。56年生まれ。東京都出身

――8日間で4億6400万ビューに達した「2002FIFAワールドカップ」の公式サイトは、アカマイ・テクノロジーズのCDNサービスを利用していたと聞きます。これは、CDNの大量アクセス処理機能が世界規模で発揮された事例の1つだと思いますが、日本国内にみるCDNビジネスの現状はどうなっているのでしょうか。

内藤 インターネット先進国といわれる米国と比較した場合、1年ほど前までは、日本でのCDNに対する技術的・ビジネス的な理解は遅れていたように思います。
 米アカマイ・テクノロジーズ(以下、米アカマイ)は1999年にサービスを開始したのですが、その当時、すでに米国にはナローバンドではありましたがインターネットの常時接続環境がありました。日本でも最近、常時接続環境がブロードバンド化の波と同時に押し寄せてきていますが、米国はブロードバンドである以前に、常時接続であるがゆえにインターネットが生活インフラとしてどの家庭にも広く浸透していたのです。米国でいち早くCDNビジネスが立ち上がったのはそのためです。
 そして2000年秋には、CDNが米国のごく一般のインターネットユーザーにも知られることになる象徴的な出来事が起こりました。接戦となった大統領選挙がフロリダ州で最後に争われたのですが、メディアがその速報をインターネットで配信したところ、その多くが膨大なアクセスに耐え切れずダウンしてしまいました。ところが、米アカマイのCDNサービスを採用していたCNN.COMとWASHINGTONPOST. COMだけが無事だったのです。これを知ったIT記者が、なかなか大統領選挙の決着がつかない中「今日現在の勝者はアカマイ」と報じたのです。こうしたこともあり、米国では早くからコンテンツを1つのオリジナルサーバーで配信することの限界と、CDNの可能性が意識されるようになったのです。
 日本でも、最近になってようやくアカマイという企業名やCDNという言葉の意味、役割を理解して下さる企業やユーザーの方々が増えてきたと実感しています。講演先でよく聴講者に質問するのですが、1年前にはアカマイの名前やCDNの真の意味を知っている方は4分の1もいらっしゃいませんでしたが、この6月に「Streaming Media Japan 2002」という展示会で講演した時には、聴講者のおよそ8割がCDNも当社のこともご存知でした。おそらく、今後日本でCDNに対する関心は米国以上に高まり、需要も米国を追い抜いていくことでしょう。

――需要が高まる具体的な要因は何ですか。

内藤 ブロードバンド化が一番の要因です。日本は、インターネットの生活への密着度は決して他のインターネット先進国より高いとはいえません。しかし、インターネット人口の内訳に着目すると、ダイヤルアップユーザーからブロードバンドユーザーへの切り替わりがものすごい勢いで進行しています。
 米国のように、高齢の方がキーボードでEメールを送るような文化は定着していませんが、e-Japan戦略が進める自治体や学校のIT化などの成果も考慮に入れると、今後2〜3年で日本人のライフスタイルも大きく変わっていくだろうとみています。日本人の特性だと思いますが、一度便利なものに飛び付くと一気に流行します。米国のようにアッパーミドルの人々だけが文化を牽引していくのではなく、平均所得の高い均質化した日本人社会の特異性が、ブロードバンド化を一気に押し進めていくことになるだろうと期待しています。

ライフラインと同じ料金体系

――御社が提供するCDNサービスの中身について解説していただけますか。

内藤 ニーズの高い、つまりアクセス数の多いコンテンツを、世界中のISP網内に設置された1万3000台の当社のサーバーの中から、ユーザーが最も快適にアクセスできるサーバーにキャッシュし配信するのが基本サービスです。ユーザーが快適にアクセスできるサーバーといっても、地理的、物理的に近いサーバーとは限りません。ネットワークで結ばれたサーバーの中から、一番早い経路でアクセスできるサーバーを見付け出しそこにキャッシュするわけです。この計算のアルゴリズムがパテント(特許)になっており、当社の強みでもあります。
 こうしたキャッシュのメカニズムは、「プル型」と呼ばれています。他方、ユーザーからのアクセスの有無に関わらず、すべてのサーバーにコンテンツをキャッシュし配置するのが「プッシュ型」です。プル型であるということは、無駄なストレージを使う必要がなく、また無駄なトラフィックを流さなくて済むということです。世界中に何万台というサーバーを設置し、グローバルにサービスを展開しスケーラビリティを保ち続けていくためには、このプル型のメカニズムが重要なのです。

――料金体系はどうなっていますか。

内藤 ガスや水道、電気料金と同じようなサービス料金体系をとっています。ユーザー企業には、月々の基本料金にプラスしてトラフィック量に応じたCDN利用料金をお支払いただいています。基本料金と実際に使用した分の料金という点では、まさしく生活インフラのサービス料と同じ考えです。長期ご利用に対する割引も準備しております。

――基本料金はどのくらいですか。

内藤 どのくらいの数のコンテンツを当社のCDN対応とするかによって違います。例えば、WebサイトやドメインネームごとCDN対応とするか、あるいはWebサイトの一部コンテンツ(オブジェクト)のみをCDN対応とするかによって基本料金が異なってきます。そのため、これまでの実際の使用料金はユーザー企業によって数十万円から数百万円とさまざまです。また、オプションサービスとしてWebサイトやオブジェクトへのアクセスログ解析、レポート作成、セキュリティ強化サービスなどをご利用いただくことで、基本料金にオプション料金が追加されていくことになります。

100%のバックアップ保証

――日本法人設立からこれまでを振り返って、CDNビジネスの手応えはいかがですか。

内藤 会社の設立は4月、オペレーションを本格稼働し始めたのは秋ごろでした。この時すでに、当社のCDNサービス開始を待たれているお客様が何社かいらっしゃいました。現在もなお、お待ちいただいているお客様がいるほど盛況な出足となっています。この要因としては、やはりワールドカップがあげられます。開催に合わせて、メディア関連企業からの申し込みが殺到したのです。当社にとってワールドカップはまさに特需でした。具体的には、読売新聞社、朝日新聞社、産経新聞社などに当社のCDNサービスをご利用いただいております。これは、新聞の発行部数で日本国内の約半分以上を占めるメディアに採用されていることを意味します。
 他にも、全日本空輸(ANA)のケースがあります。同社はもともとインターネットを使ったフライト予約を行っていましたが、アクセスに20〜30秒も時間がかかっていました。そこで、「超割」というバーゲン型運賃キャンペーンの開始に合わせて当社のCDNサービスを導入し、アクセス時間を2〜3秒へと短縮することに成功しました。これなら、電話受付より人手もかかりませんし、何よりお客様に満足いただけ、売り上げ増大に貢献できたと自負しております。

――大量のアクセス処理が必要なWebサイトを持つ企業が対象となると、顧客は大手ポータルサイト事業者やECサイト事業者に限られてくるように思うのですが。

内藤 1年を通して大量アクセスが発生しないWebサイトでも、CDNが効果を発揮するケースがあります。例えば、インターネットで生花販売を行っている日比谷花壇は、1年のうち母の日の前の1週間にWebサイトへアクセスが集中するのですが、当社のCDNをご利用いただくことでそのピークを無事に乗り越えることができました。また、ウィルス対策ソフトウエアの開発で知られるトレンドマイクロにも、緊急にワクチンを開発して配布しなければならない非常時への備えとして、当社のCDNをご利用いただいております。いずれも、自社でインフラを構築するにしてはそれほどの利用が見込めないケースですが、当社をご利用いただくことで、本来なら固定費として発生する部分のコストを変動費として処理することができるようになりました。
 さらに、米コカ・コーラのようなケースもあります。同社は、Webサイトで清涼飲料水を販売しているわけでなく、大量のアクセスが発生することもありません。にもかかわらず、当社のCDNを採用しています。理由は、万が一Webサイトの表示に時間を要したり、何らかの理由でWebサイトが表示されなければ、ユーザーのコカ・コーラに対するブランドイメージが傷つくと考えているためということです。
 CDNというと大量のアクセス処理ばかり注目されがちですが、当社のサービスは同時に、オリジナルサーバーの100%バックアップを保証しています。Webサイトへのアクセスが早いだけでなく、仮にオリジナルサーバーがダウンしても他のサーバーがWebサイトを表示するのです。決してWebサイトが落ちないという機能も、大事なサービスの1つと考えて提供しています。

今後1年で600社を獲得

――競合についてはどのようにお考えですか。

内藤 他社が当社と同等のサービスを展開するのは難しいと思います。先に説明したアルゴリズムの特許もありますし、すでに1万3000台というサーバーを所有していることが大きな強みとなっているからです。むしろ怖いのは、日本企業が抱える「Not Invented Here」――、企業が内部で当社と同様のアルゴリズムを開発した場合、自社の技術や製品に固執し、他社の商品やサービスを利用しない、排除しようと考え始めるメンタリティですね。先のANAのケースでも、同社がIT部門の予算枠だけで考えることなく、全社的な経営判断としてコンテンツ配信部分のアウトソーシングに踏み切ったことが大きかったと思っています。

――日本では今後、どのくらいのユーザー企業を獲得目標に掲げていますか。

内藤 米国では現在、約1200社のユーザーを獲得しています。そこで、日本市場では単純に米国と日本の総人口を比較して、今後1年間で約600社を獲得したいと考えています。そのうえで、この1年間で十分単年度黒字化を達成できると見込んでいます。
 また、将来的にはアジアパシフィックという市場を視野に、当社が同地域の拠点として機能していければと考えています。現在、アカマイグループが利用する1万3000台のサーバーは、これを所有する米アカマイが集中管理しています。しかし、米東海岸にある集中管理センターと日本は13〜14時間の時差があるうえ、言葉の壁も立ちはだかっています。きめの細かいユーザーサポートを考えると、将来的にはアジアパシフィック地域で現在唯一の現地法人である当社が、ハブ的な役割を果たしたいと思っています。

(聞き手・田中大介)

用語解説

●アカマイ・テクノロジーズのCDNサービス
EdgeSuite:世界最大の分散型エッジサーバー・ネットワークを用い、インターネットの混雑を迂回してWebコンテンツをエンドユーザに配信する
FreeFlow Streaming:ストリーミング・メディアのオリジナル・ストリームを分散型エッジサーバー・ネットワークに転送し、そこからライブおよびオンデマンドでエンドユーザーに配信する
SiteWise:Webサイトのビジターの利用状況に関する情報をリアルタイムに分析し、分かりやすいレポートとして提供する
 

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