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2001年11月号

ブロードバンド・エクスチェンジ:藤原洋 代表取締役
ブロードバンド化のアキレス腱
「ミドルマイル」をBBXで補強!
コンテンツ配信の要を担う

インターネット総合研究所(IRI)、NEC、松下電器産業の合弁によって設立された「ブロードバンド・エクスチェンジ」(BBX)が、9月13日に第一種電気通信事業免許を取得した。ブロードバンド時代のコンテンツ流通に不可欠なミドルマイルのネットワーク整備が狙いだ。IRI所長を兼務する藤原洋代表取締役は、これまでに商用IXやiDCなどインターネットの発展に重要な役割を果たす事業会社を相次いで立ち上げてきた。同氏は、“次の一手”となるBBX事業で、新しいインターネットの世界を切り開こうとしている。

Profile

藤原 洋(ふじわら・ひろし)
1977年3月京都大学理学部卒業。日本IBM、日立エンジニアリングを経て、85年アスキー入社、93年6月同社取締役。96年12月インターネット総合研究所を設立し代表取締役所長に就任。2000年11月からブロードバンド・エクスチェンジ代表取締役を兼任。日本インターネット協会副会長をはじめ、情報通信関連の団体・政策委員会などに多数参加。東京大学工学博士号を持ち、会津大学・慶應義塾大学・東京大学・流通科学大学・青山学院大学で教鞭も執る。

――BBXでは、「ブロードバンドネットワークエクスチェンジ」という新しいサービスの概念を打ち出しています。まず、これがどういうものかを説明していただけますか。

藤原 一言でいうと、ブロードバンドアクセス事業者やISP、iDC事業者などを相互接続することで、ネットワークのミドルマイル部分におけるブロードバンド環境を創造するサービスです。そしてBBXは、ISPでもブロードバンドアクセス事業者でもiDC事業者でもなく、これらの事業者を支援するミドルマイルのサービスプロバイダーと位置付けられます。

――「ミドルマイル」も、これまであまり耳にしたことがない言葉ですね。

藤原 これは、DSL事業者やISPのNOC、CATV事業者ならヘッドエンド、さらにiDCといったブロードバンドインターネットを集約する拠点を相互に結ぶネットワークを指します。
 90年代後半に学術用途から商用へ移行したインターネットは、電話網という基盤によって急速に広がりました。そして、市場は、インターネットに“つなぐ”というフェーズから、Eコマースやコンテンツ流通などインターネットを“使う”フェーズへと進んできました。そうした中で、「できるだけ安く速く使いたい」という要求、すなわちナローバンドのインターネットからブロードバンド環境へのニーズが高まりました。
 ネットワーク側をみると、国際・国内長距離のバックボーンが光ファイバーによって超高速化しています。企業内のLANもギガビットクラスの伝送が実現されています。これに続いて、アクセス網部分のラストマイルもCATV、ADSL、FTTH、無線アクセスといったサービスの登場によって、ブロードバンド化が急速に進んでいます。
 しかし、ミドルマイルの部分だけが取り残され、ブロードバンドネットワークの普及において大きなネックとなってきているのです。
 具体的には2つの問題があります。まず、ブロードバンドアクセス網を集約するミドルマイルはギガビットクラスの回線容量が必要になりますが、拠点間の接続に用いられてきた電話網ベースの専用線ではこれに対応できなくなってきています。容量はもちろん、コスト面でも“64kbps×n本”という考え方の料金体系はマッチしなくなっています。もう1つは、冒頭にお話したBBXの狙いであるブロードバンド関連事業者同士のピアリングです。自由なルーティングを行うインターネットの世界で事業者同士が個々に相互接続を実現している状況では、リアルタイム性が要求されるストリーミングコンテンツも、他のコンテンツと区別されずに扱われるため、何十段もホップがかかってしまい、エンドユーザーに対するクオリティを確保できなくなります。
 BBXは、これらの問題を解決するために、光ファイバーとWDM装置で当初40Gbpsのバックボーンを構築するとともに、異なるネットワークを相互接続した時に1ホップで済むようなネットワークによって、エンドユーザーが良質で豊富なコンテンツを、満足できるクオリティ、合理的な価格で享受できる環境を提供していきます。

山手線沿線を手始めに1都3県へ

――サービスの具体的な中身はどのようなものになるのですか。

藤原 大きく3つのサービスがあります。
 まず、事業者の拠点間を結ぶ「ネットワークエクスチェンジ」(NX)サービスです。株主の1社である東京電力などの光ファイバー網(ダークファイバー)を使って、レイヤ3のスイッチングサービスを提供します。これに付随して、「光ファイバーも分けてほしい」という要望があれば、レイヤ2のトラフィック交換サービスも提供していきます。
 2つめは、「コンテンツエクスチェンジ」(CX)サービス。事業者の拠点にあるコンテンツを相互交換するレイヤ7レベルのエクスチェンジサービスです。ISPにとっては、BBXを介してコンテンツを集めることができますし、逆に自社の会員向けに作成したコンテンツを他のISPに提供することも容易になります。もちろん、コンテンツプロバイダー側にとっても、BBXを経由してあらゆるISPやアクセス事業者にコンテンツを流通させることができるというメリットを得られます。
 3つめの「ソリューションエクスチェンジ」(SX)サービスは、ブロードバンド事業者が新しくサービスを提供する際のシステム構築に関するノウハウを提供するものです。例えば、アナログの映像配信が本業であるCATV事業者はブロードバンドのインフラは持っていますが、インターネット接続サービスを提供する際に機器をどこに設置するのか、どのくらいのキャパシティが必要なのかといったノウハウを有しているとは限りません。こうした事業者に対して、技術的な支援を行っていきます。

――ネットワークのエクスチェンジというと、現状のサービスではISPを相互接続するインターネットエクスチェンジ(IX)がイメージとして浮かんできますが、違いは何ですか。

藤原 IXは、ISP同士を相互接続するレイヤ2までのサービスですが、BBXはレイヤ3レベルの相互接続を提供するサービスです。また、IXはあくまで“点”のサービスで、コンテンツプロバイダーをホスティングしているISPが自ら専用線を引いてIXにつなぎますが、BBXはその区間のコストを負担してコンテンツを迎えに行きます。この2点が根本的に違います。

――一方、SXサービスは、IRIのビジネスと重複するように思うのですが。

藤原 確かにサービスの内容は同じといえますが、IRIは広域で事業展開できるほど人員がいません。これに対してBBXは、株主からの人的リソースも使い全国的にサービスを展開しますから、ビジネスの規模が異なります。

――年内をめどに首都圏でのサービス開始を予定されていますね。

藤原 はい。現在、レイヤ3のエクスチェンジネットワークの構築を進めているところで、当初は、楽天やYahoo!などメジャーなコンテンツを抱える山手線沿線のiDC6カ所を結びます。次に東京・千葉・埼玉・神奈川の1都3県へとネットワークを広げていきます。日本のブロードバンドコンテンツは現在、東京エリアに集中していますから、ここでiDCやNOCを相互接続すれば、相当数のコンテンツをカバーできることになります。

――サービス別にみると、どのように推移するとみていますか。

藤原 当面はやはりNXサービスが主力となり、CXサービスとSXサービスが徐々に立ち上がっていくと思います。ただ、5年くらいのレンジで考えると、CXサービスが相当期待できるとみていて、株主のNTTデータから技術を提供してもらい、少額決済の手段であるマイクロペイメントをサービスとして提供していこうといった話を進めています。

――トータルの売り上げとしてはどのくらいの規模になりそうですか。

藤原 長期的にみて数百億円のビジネスではないでしょうか。数千億ではない、しかし数十億にとどまるものでもないと思っています。

100人が喜ぶコンテンツでも儲かる

――BBXのサービス展開においては、コンテンツ業界側の動向も大きく関わってくると思います。ブロードバンド時代のコンテンツビジネスについては、どのように見通していますか。

藤原 まず、ブロードバンドコンテンツというのは、“アナログ時代のコンテンツ”とはだいぶ性格が異なると感じています。映像を例に取ると、アナログ時代はきちんとしたシナリオを書いて熟練のカメラワークで作成したコンテンツが求められていました。しかし、ブロードバンドの世界では価値観が違ってきます。例えば、旅行好きの人が旅先でデジタルビデオカメラを使って撮影し編集しただけのコンテンツがあるのですが、これが旅行ガイドブックよりも面白いのです。

――ビジネスとして考えると、ブロードバンド市場は、コンテンツプロバイダーが参入しやすい環境になるということですね。

藤原 そうです。大資本をもとにして100万人に見せるコンテンツではなく、少ない資本でも100人を楽しませられるコンテンツが作れれば十分にビジネスとして成り立つでしょう。  ですから、BBXが提供するインフラは、よいアイデアや中身があれば、資本関係や規模にこだわらずコンテンツビジネスのチャンスを享受できるというのが非常に重要だと思っています。そうすれば、従来からの「マスメディア」とは違う「ブロードバンドメディア」という新しい産業が形成されると思います。

1年後、名古屋・大阪で事業化も

――BBXの長期的なビジネスとしては、どのようなプランを立てていますか。

藤原 採算だけを考えると、BBXはコンテンツが集中している東京エリアだけのサービスにとどめたほうがよいのですが、実は設立当初に「ブロードバンド時代における地域格差を是正する」という大きな目標を掲げています。  ですから、ゆくゆくは各地域でBBX事業を立ち上げたいと思っています。そして、各地のBBXを結ぶ光ファイバー網を公的な立場に立って構築すれば地域格差をなくすことができます。
 コンテンツの発信拠点もその消費も東京に集中している現状から察すれば、ブロードバンド時代には「コンテンツは東京に置く」という傾向がさらに強まり、地域格差はますます助長されることになってしまいます。これを防ぐためには、ネットワークのハブを東京以外の地域にも設けていく必要があります。
 その役目を地域展開されたBBXが担っていきたい。さらには、各地から発信されたコンテンツが他の地域で消費されても、発信拠点側で課金される仕組みを用意し、コンテンツの発信と消費のモデルを確立していくような活動もしていこうと考えています。

――地域展開はどのようなスケジュールで進めていくのですか。

藤原 まずは、東京エリアで単月黒字化のめどを付け、BBXのビジネスモデルを実証するのが先決ですが、それに1年以上はかからないでしょう。その時までには、まず名古屋地区、大阪地区で事業を立ち上げられる可能性は十分あります。なぜなら、ブロードバンドは単なる情報流通の手段ではなく、経済活動そのものとリンクするものだからです。BBXも各地域の有力企業や経済団体などと連携した形で展開していきたいと考えています。

――各地のBBXは、どのような企業形態になるのですか。

藤原 いろいろなモデルがあり得ると思います。例えば、BBXを1社にしておいて、地方の有力企業その株主となってもらう。また、その地域の有力企業と合弁で会社を立ち上げる。あるいはフランチャイズのような形で運用ノウハウを提供するという形も考えられるでしょう。

“広帯域網を使う”が次の焦点

――最後に、筆頭株主であるIRIの所長という立場でお話を聞かせてください。IRIの事業展開の中で、BBXはどのような位置付けにあるのですか。

藤原 これまでにIRIが生み出した新しい事業の中で代表的なものとして、2つの企業をあげることができます。日本で最初の商用インターネットエクスチェンジ(IX)事業者として、有力ISPなどとの共同出資で97年7月に立ち上げたJPIX、iDCの重要性を訴えるため2000年2月にアジア・グローバル・クロッシング、ソフトバンク・ネットワークスとの合弁で設立したグローバルセンター・ジャパンです。
 前者は、インターネット業界の共有財産として、商用インターネットの発展に貢献してきましたし、後者も供給過剰気味なiDC業界の競争環境を考えれば、十分役割を果たしていると思います。
 BBXは、これらのサービスの次のステップという位置付けにあり、インターネットのインフラ整備・発展に寄与するIRI事業においては一貫性のあるアプローチです。

――BBXも、企画会社設立時から出資しているNEC、松下電器産業に加え、住友商事、東京 電力、NTTデータとさまざまな業界から株主を集めていますね。

藤原 ええ。NEC、松下電器産業は、それぞれ通信機器業界、家電業界のリーディングカンパニーとして、通信と放送の融合も視野に入れたブロードバンド環境の構築に向けて豊富なノウハウを提供してくれます。住友商事は、CATV事業をはじめブロードバンドメディア分野に積極的に参加していますから、協業によるシナジー効果は非常に大きなものがあります。そして、先述の通り東京電力はBBXのネットワークインフラとなる光ファイバー網の提供、NTTデータは決済や認証などの技術の提供において力を貸してくれます。

――IRIとしては、筆頭株主として各社のノウハウを取りまとめていく役目も担っているわけですね。

藤原 というよりも、IRI自身も一株主として技術面や人材面でBBXの事業展開を強力に支援していくという姿勢です。それに、出資比率についても特にこだわりを持っているわけではなくて、ブロードバンドのインフラ事業に直接的なメリットのある企業に株主としてどんどん参加してほしいと思っています。
 実は、BBXの経営責任者という職務も、そう遠くない時期に業界から専任社長を迎えてバトンタッチしようと考えているのです。私はあくまでBBXを立ち上げるための“つなぎ役”であって、事業が軌道に乗ったら、IRIという中立的な立場で、インターネットの発展に必要な次のインフラビジネスを作り出そうと思っています。

――次のビジネスとはどのようなものですか。

藤原 BBXによってブロードバンドインフラの整備がひと通り完了すれば、次は「ブロードバンドインフラをどう使うか」が焦点になります。そこに新しいビジネスの鍵が隠されていると思います。

(聞き手・大谷聖治)
 

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