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2003年3月号

NEC取締役専務・ネットワークスカンパニー社長 矢野 薫氏
交換機の終焉は織り込み済み
IPとITで収益モデルを作る

「交換機からIPへの事業体質改善は済んでいる」
―NECネットワークスの矢野薫カンパニー社長は、
苦境に立たされる業界の中で、
“勝ち組”の自信をこう示した。
その裏付けと、今後の事業戦略を聞いた。

Profile

矢野 薫(やの・かおる)氏
1966年3月東京大学工学部電子工学科卒業、同年4月NEC入社。85年11月NEC Americaに出向。89年12月NEC伝送通信事業部長代理、90年7月同事業部長、94年6月伝送事業本部長、95年取締役支配人、98年7月NEC USA President就任。99年6月からNEC常務取締役を兼務。2001年1月取締役常務・NECネットワークス カンパニー副社長、02年4月取締役常務・NECネットワークス カンパニー社長を経て、同年10月から取締役専務・NECネットワークス カンパニー社長 75年6月にはスタンフォード大学電気工学科修士課程を卒業
1944年2月神奈川県生まれ

  通信業界では、電話からIPへのシフトによる構造変化が起こっています。NTTの交換機への投資凍結に代表されるように、キャリアネットワークの見直しも急速に進められています。こうした流れは、御社にどのような影響をもたらしていますか。

矢野 通信機器業界全体で見れば、キャリアの投資抑制は大きなダメージです。私もよく「NTTの交換機投資がなくなって大変ですね」と声をかけられます。しかしながら、私どもの事業の中身を見てもらえばお分かりいただけますが、伝統的な固定キャリア向けの売り上げは、全体の4分の1にも満たず、固定キャリア向け交換機ということでは、全体の数%程度なのです。事業カテゴリーの中でも「ブロードバンド」、つまりIPネットワーク構築に向けた機器がすでに主力になっています。

  交換機に依存する事業形態からの転換は済んでいるということですね。

矢野 はい。実際、かつては数千名いた固定網用の交換機に関わる技術陣も今は100名足らずになっていますし、生産ラインも国内外を含め縮小するなど、体質改善の手立てを織り込んできました。私どもの開発陣にとって、電話からIPへの転換はすでに終わっているのです。ただし問題は、新しい体質に変わったところで、きちんと収益を上げることができるかどうかです。この点については、まだ十分に確立されていないと思っています。

  その解決策は。

矢野 キャリア向けインフラ事業は、私どもNECにとって固定系・モバイルとも基本中の基本として、IP時代においても着実に進めていきます。そのうえで、企業向け、モバイル端末、その他の3分野でドライブをかけていきます。今年度の実績としては、企業向けとその他がプラス成長でした。モバイル端末は国内外の製品投入のずれ込みなどからマイナスとなっていますが、最も重要な柱であることに変わりはありません。

IT・通信の統合を強力推進

  ドライブ役となる各事業のポイントについて、まずは企業向けビジネスから教えていただけますか。

矢野 すでにマーケットの中でIP化が急速に進んでおり、電話の世界でもキャリアのIP電話サービス、企業におけるIP-PBXへの流れが明確に見えてきました。私どもとしては、この流れに対応するため、ネットワークとITを組み合わせた付加価値を提供する「IT・ネットワーク統合ソリューション」を強力に推し進めています。

  今の景気低迷による企業投資の冷え込みが気になりますが……

矢野 総体的に見れば設備投資を抑制するという流れにあることは確かです。ただ、日本においてはITバブル、すなわち企業がこれまでITに過剰投資してきたということではないと思っています。また、日本の企業はITとネットワークを使ってもっと生産性を向上していかなければ、国際競争には絶対勝てません。こうしたことから私どものコンセプトによって需要を掘り起こす余地は十分にあると見ています。

  このところキャリアから企業向けのIPセントレックスサービスが続々と登場してきています。従来からのシステム販売に影響が出てくるのではないですか。

矢野 今の時点だけを捉えて、IP-PBXとIPセントレックスを比べるなら、前者のほうが優位でしょう。企業ごとに異なるニーズに応えていこうとすると、汎用的なIPセントレックスサービスではどうしても限界があります。もちろん、長期的に見てどうかということになると予測しにくい面がありますが、間違いなく言えることは、お互いが共存し切磋琢磨していくことで、お客様により利便性の高いシステムやサービスが生み出され、市場がますます発展していくということです。

  モバイル端末事業では、今後どのような展開を考えていますか。

矢野 何よりも、3G対応でよい商品を早く出すことを大目標にしています。FOMA端末の今春のモデルもずいぶんよくなりましたが、もっともっとよいものを早く作って、アドバンテージを保っていきます。もう1点、世界進出をもっと積極的に進めていきます。すでに欧州や中国で事業を展開していますが、日本が先行している技術を生かして、世界で意味のあるシェアを取っていきたいと思っています。

  その他事業については。

矢野 この中身は、防衛関係や放送業界などを対象としたシステムなどで、売り上げで年間2000億円程度の規模ですが、全体を下支えしてくれています。それに、放送業界の地上波デジタル化需要はかなり期待できるところです。

ノンハードで稼ぐ仕組みを作る

  通信ビジネスという視点で見ると、今のIP化はどのようなインパクトをもたらすのでしょうか。

矢野 私は、IP化というのは「コンピューターの世界で起こったダウンサイジングの通信版」だと捉えています。例えば、局用交換機がスイッチやルーターに代わり、伝送路も電話を中心に考えた64kbps×nの世界から端末レベルでギガクラスのトラフィックを流すようになるわけですから、設備コストも桁違いに安くなります。この意味するものは何かというと、「手を打たなければ売り上げがどんどん落ちてしまう」ということです。

  どのような手当てが必要ですか。

矢野 ハードウエアは間違いなく安くなるわけですから、ノンハードの部分で収益を上げていく仕組みを考えなければなりません。それが、いわゆるソリューションの強化ということになります。
 私どもでは1つの策として、ハードウエア・ソフトウエアを問わず開発技術者を、お客様に直接対応するSEにシフトさせています。今年の9月までに1000名規模のシフトを目標にしており、すでに400名近くがシフトしています。ノンハードに付加価値を求めていかないと、やっていけないと考えた結果です。そして、これは私どもの勝手な想いではなく、お客様のニーズ、すなわち通信技術が急速に発展する中で、自社ですべてを実行するより、業務によってはアウトシーシングしたほうがよいという意向の高まりにも合致しています。
 実は、NECは100年前の創業時から「Better Pruducts,Better Services」を標榜してきました。しかし、いつの間にかProductsに寄って走るようになってしまいました。ですから、ここでもう一度原点に立ち返り、Servicesでお客様の役に立てる事業体制を確立しなければいけないと考えています。

  システム販売を手がけるディーラー/SIも、苦境を強いられています。

矢野 確かにそうですね。メーカーと同じように、さまざまな面で体質の転換を迫られています。基本的なところでは、電話からIPへの技術革新に乗り遅れないよう、自らのスキルを高めていかなければなりません。これはそう簡単なことではありませんから、私どもも強力にバックアップしていきます。さらに、ノンハードで稼いでいくための事業体制の見直しも必要です。その先を考えると、通信、ネットワークの部分だけで付加価値化を進めていくのは限界があります。そうすると、やはり単なるネットワークの販売店ではなく、IT・ネットワーク統合ソリューションの販売店にもなっていかなければならないでしょう。
 ただ、その過程においても、ネットワークを知っているということは大きな強みになります。コンピューターの世界は分散化が進み、そのネットワークもLANからWANへと大きく広がってきましたが、コンピューターだけを手がけてきた人はWANをなかなか扱えないものです。キャリアとの関係や信頼性を確保するための網設計のノウハウ等々を理解している必要がありますからね。そうしたことから、長年通信を手がけてきた人が、ネットワークコンピューティングの時代でも活躍できる部分は十分あるわけです。

念願の映像時代がついに来た

  今後の通信ビジネスを見通すうえでは、ブロードバンド市場がどのように発展していくかがポイントになると思います。この点については、どのようなシナリオを描いていますか。

矢野 市場では今ADSLが急成長していますが、上り下りの速度差や延長距離などの制約があることは否めない事実です。やはり、将来のアプリケーションの発展を考えると、限界がないサービスはFTTHです。
 日本は幸いにも、国土が狭く人口密度が非常に高いため、ネットワークの構築コストが本質的に安く抑えられるという優位性があります。そう考えると、よくいわれる「ブロードバンドはインフラが先かコンテンツが先か」という議論の時期はすでに過ぎて、キラーコンテンツを待つだけという段階にあるといってよいでしょう。
 そうした中で注目すべきは、実はモバイル分野でカメラ付き携帯電話が大ブームになっていることです。通信の世界に身を置いてきた者にとって、これはまさに“Dreams come true”で、私自身も「夢見てきた映像の時代がついに来た」という想いです。
 映像のやり取りを一度体験したユーザーは、「もっときれいな映像が見たい、動画もやり取りしたい」と思うはずです。となれば3Gへと移行せざるを得ませんし、そのニーズは当然、固定系のネットワークにも及んでいくはずです。コンテンツというとどうしてもコストが問題ですが、このピアツーピア映像通信ならコストがかからないことが重要なポイントです。

  そうした時代を迎えるにあたって、御社の強みはどのような点になりますか。

矢野 ブロードバンド&モバイルの時代に、ネットワークだけ見ても端末からインフラまで、ブロードバンドからモバイルまで、さらにアプリケーションも含めてすべて提供できるソリューションプロバイダーであるということに尽きます。そしてこの強みは、IT不況を通り抜けた後にますます発揮されるだろうと見ています。
 業界各社はこの間、事業の“選択と集中”を進めてきました。これは私どもも例外ではありませんが、当社は通信の総合サプライヤーというポジションは崩していません。基本的にすべての技術を私どもの内部に蓄積しているため、外部から製品を調達する場合でも、単なるショッピングではなく、社内の技術との比較を踏まえ、自前と調達のどちらがお客様にとって得策かを厳しい目で判断しています。ですから、外部になければ自分で作れる、お客様がどうしてもほしいというものがあったら作れるだけの力があります。本格的なIP時代においても、お客様が困っていることに確実に応え、お客様を満足させるベストなソリューションをいつでも提供できるのは、私どもしかできないと思っています。
(聞き手・土谷宜弘)
 

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