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Interviewインタビュー

2023年1月号

地域DXの「加速」が私の使命
企業カルチャーも変えていく

澁谷直樹 氏

澁谷直樹 氏
(しぶたに・なおき)
京都大学工学部卒業。1985年4月、NTTに入社。2010年6月にNTT東日本 福島支店長、2013年7月に経営企画部 中期経営戦略推進室長、2014年6月に取締役 ネットワーク事業推進本部 設備企画部長、2018年6月に代表取締役副社長 ビジネス開発本部長、2020年1月にNTTe-Sports 代表取締役社長などを経て、2020年6月にNTT 代表取締役副社長。2022年6月、NTT東日本 代表取締役社長 社長執行役員に就任(現職)。1963年生まれ、京都市出身

NTT東日本
代表取締役社長 社長執行役員
澁谷直樹 氏

目標は「NTT東日本って、昔は通信会社だったんだ」と言われるぐらいになること──。NTT東日本の澁谷直樹社長はこう言って、変革への意欲を燃やす。新会社をもっと作りながら、共感型で地域に入り込み、さらに企業カルチャーも変え、地域の価値創造をアクセラレーション(加速)させていきたいという澁谷社長に今後の戦略を聞いた。

「地域の未来を支えるソーシャルイノベーション企業」という目標を社長就任時に掲げました。ここ数年、NTT東日本は、地域のためのICTパートナーへの転換を進めてきましたが、これまでの成果をベースに、次はどこを目指すのですか。

澁谷 現在、光ファイバーの世帯カバー率は99%くらいあります。光のブロードバンドがこれほど整備されている国は、世界を見渡しても数少ないでしょう。
 このように光ファイバーがほぼ行き渡るなか、我々は2015年に光サービス卸をスタートさせました。光回線の直販および代理店販売を縮小し、この7年間、次の事業を模索してきたのです。
 その初期にあたる前々社長の山村の時代は、地域の中小企業にもっと貢献しようと、ビジネスホン販売を発展させる形で、セキュリティやWi-Fi等の高付加価値サービスに力を入れました。
 そして前社長の井上の時代に、農業、アート、eスポーツなどの新会社を次々と約10社も立ち上げながら、少子高齢化や後継者不足といった地域の課題解決にもっと貢献しようと挑み始めたのです。
 お陰様で今、対応が追い付かないほどの多くの引き合いを頂戴していますが、こうして地域のお客様に向き合っていますと、「もっと顧客の数を増やしたい」「若者に来てほしい」「世界にマーケットを広げたい」といった声を強く頂きます。つまり、課題解決にとどまらず、価値創造を手伝ってほしいというニーズです。
 それで掲げたのが「地域の未来を支えるソーシャルイノベーション企業」という目標でした。次のフェーズでは、サステナブルな循環型の地域経済の実現に取り組みます。

どういうことですか。

澁谷 サステナブルというと環境保護だけがイメージされがちですが、地域のお祭りや文化、産業、特産物など、地域の特色が続いてこそのサステナブルだと我々は考えています。若い人がデジタルの力を使って地域の文化活動に参加するのもサステナブルですし、観光客が増えて民芸品などの販売が伸びることもサステナブルです。
 ここで大事なのは、稼げないことには、人を呼び込む原動力になり切れないということです。サステナブルであるためには、お金のサーキュレーションも必要です。
 例えば我々は、葛飾北斎が晩年に描いた長野県小布施町の岩松院本堂の天井絵「八方睨み大鳳凰図」をデジタル化し、遠隔でも鑑賞可能にしましたが、「実物を見たい」と岩松院の来訪者はコロナ前より増えたのですね。このようにお金の循環を生み出すことを目指しています。
 地域に人とお金をもっと呼び込む仕組みをどう作っていくかが、次のチャレンジです。

レベニューシェアで持続的に

地域の価値創造に貢献しながら、NTT東日本としては、どのように収益化していく考えですか。

澁谷 レベニューシェアでいいと思っています。「対価をいくら下さい」というモデルでは持続が難しいからです。私たちがデジタルの力でお手伝いすることで生産性が上がり、ブランド力が上がり、流通先が拡大し、それで増えた収益をシェアしていただく。ビジネスモデルもサステナブルでなければいけません。

課題は何でしょうか。

澁谷 今の一番の課題は、あまりに案件が多く、その差配をどうしていくかなのです。
 地域のお客様に対して、我々はハイブリッドチームで対応しています。フロントで営業を担当するのは今まで通りの法人営業部門です。営業担当者が例えば自治体の方と話し合い、「次世代農業と再生エネルギーとスマートストアを組み合わせましょう」となると、それらを担当するグループ会社の専門家とネットワークの専門家などで構成されるハイブリッドチームを編成するのですが、そのリソース配置が十分に回り切れていません。地域や案件ごとにいろいろとニーズが異なるのが理由の1つで、ハイブリッドチームをどう編成し、価値創造をどう推進していくかが今後のカギだと捉えています。
 これまでのインキュベーションのフェーズはかなりうまくいきました。今からのアクセラレーションのフェーズでどうスケールさせていくかが、私の重要なミッションです。

デジタル人材の育成もカギの1つですか。

(聞き手・太田智晴)
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