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2005年5月号

富士通 取締役専務 経営執行役専務
伊東千秋 氏
通信事業はグローバル競争時代
国内IP-PBXシェア25%を期す

NECと並ぶ通信の雄、富士通に活気が戻った。製品事業グループを率いる伊東千秋専務は「北米市場で受けた打撃から立ち直り、光伝送・IP・3Gをコアとする総合力でグローバル競争を戦い抜く」と決意を語る。

Profile

伊東千秋(いとう・ちあき)氏
1970年、東京大学工学部を卒業し富士通入社。89年、基盤システム事業本部マルチメディア開発統括部第一技術部長。95年、パーソナルビジネス本部第二パーソナルシステム事業部長。2001年、パーソナルビジネス本部長兼モバイルフォン事業本部副本部長。01年、常務理事パーソナルビジネス本部長。02年、執行役パーソナルビジネス本部長。03年、経営執行役常務プラットフォームビジネス企画本部長等を経て、04年6月より現職

  「富士通の通信事業戦略が分からない」という声が業界で聞かれます。シスコシステムズとの提携など個別のニュースはあるのですが、トータルの戦略が見えにくいというものです。先般、ネットワーク事業の現状と展望を発表されましたが、戦略的な内容の記者会見は3年ぶりくらいでしょうか。

伊東 発言を控えていたのは、「利益を出していないのに偉そうなことは言えない」と思っていたからです。しかし、2004年度は売上高3950億円、営業利益率2%と、黒字転換の見込みが立ったことで、言うべき時が来たと思い立ち戦略発表の機会を得たわけです。

  北米市場での手痛い失敗から、ようやく立ち直ってきたということですね。

伊東 私は失敗だったとは思っていません。確かに、2000年に100億ドルあった北米の光システム市場が通信バブルの崩壊により2年後に13〜14億ドルにまで縮退した時は、事業規模が大きかっただけに大打撃でした。しかしこの市場は03年を底に平均7%伸びています。長年の苦労が実を結び、今日では28%でシェアトップ。しかもベライゾン、SBC、コムキャストという北米を代表するキャリアを顧客にでき、今後が楽しみになってきました。
 唯一、採算に乗らなかったのがルーターやスイッチでした。技術力も製品の競争力もあると自負していますが、事実上の標準ともいえるシスコの存在は大きく、厳しい状況が続いていました。その問題もシスコとの業務提携によって解消されつつあります。

  もはや雌伏の時は過ぎたと。

伊東 業績は2002年度に底を打ちました。この時、国内外あわせた製品事業の売上額は3697億円でしたが、04年度は3950億円に回復する見通しです。内訳はIPとモバイルのシステム事業が2050億円、FTTHやADSLなどのアクセス系を含む伝送システムが1900億円です。ネットワーク関連事業全体としてはこれに、好調が続くFENICSなど、ネットワークサービス事業の売上1200億円が加わります。製品事業の目標としては、07年度売上4600億円、営業利益率5%を掲げています。
 この間、事業規模の縮小に伴い、国内の開発・製造部門の大規模なリストラと、北米でのPBX事業撤退を含む海外人員の削減、光・IP・3Gモバイルへの“選択と集中”を断行しました。「七転八倒」でした。

  懸案の北米での光伝送事業再建だけでなく、アルカテルとのW-CDMAでの協業や、BTのオールIP化計画に参画の意欲を示されるなど、海外展開には依然精力的ですね。

伊東 お陰様で有利なポジションに立てていると思います。日本のネットワーク市場は世界全体の10%しかなく、今後さらに下がるでしょう。どんなに頑張っても、もはや国内だけでは事業が成り立ちません。グローバル攻勢に打って出られない商品は生き残れないのです。社員には「世界中で売ろう」「光もワイヤレスもワールドワイドに展開しよう」と話しています。
 もともと富士通のネットワーク事業は、コンピューター以上にグローバルなものでした。ただし後発国を中心としていたので、今後は先進国それもカッティング・エッジの分野に注力していきます。

  NECや日立、沖電気との違いは、世界市場での事業展開だということですか。

伊東 そのとおりです。私がいつも言っているのは、「オープン」「ミッションクリティカル」「グローバル」の3つです。とりわけオープンとは、技術や製品面だけでなく、マインドセットをオープンにして、広範な方々と一緒にビジネスをしようという意味です。例えばルーターやスイッチにシスコが強いのであれば、自社開発にこだわらず「一緒にやろう」と。ただし、競合分野ではガチンコで戦おうということです。

キャリア向けと企業向けが融合

  国内戦略を伺います。モバイル分野では、イー・アクセスとのW-CDMAの1.7GHz帯での実験計画が発表されましたが、これまで富士通はNTTドコモのインフラを担当してきましたね。

伊東 イー・アクセスのサービスはまだ認可されていませんので何も言えませんが、商用化されるときは是非一緒にやらせていただきたいですね。NTTドコモもHSDPAやスーパー3Gなど次々にネットワークの拡張計画を打ち出していますから、当社もこれまで築いてきた関係に支障をきたすわけにはいきません。幸い富士通はモバイルのインフラ部隊を2つ持っています。1つはNTTドコモと一緒に取り組む最先端の部隊、もう1つは国際標準技術で展開する部隊です。仮にイー・アクセスから受注できたら、後者が対応することになります。ドコモ側にもそうお話しています。

  「富士通はキャリア向けのインフラ事業を中心とし、エンタープライズ分野にはリソースを集中しないのではないか」という見方もあるようですが。

伊東 そんなことはありません。ただ、キャリアビジネスとエンタープライズビジネスの境界は薄れています。技術的にも商品的にも極めてホモジニアスになっており、通信事業者にきちんと対応していないと、一般民間企業の仕事もできなくなりつつあるのです。
 私が言いたかったのは、すでに普及期に入り価格勝負になった製品は、中心課題ではないということです。企業向けにせよキャリア向けにせよ、技術の最先端をリードし続けることが、当社が生き続ける条件です。

  キャリア向けと一般企業向けのビジネスボリュームの割合は、現在どれくらいですか。

伊東 3対1くらいでキャリアビジネスの方が大きいですね。今回のシスコとの提携によって、エンタープライズビジネスにドライブがかかると期待しています。これまでは自社でも対抗製品を作っていたので、どうしてもシスコ製品の販売には力が入りませんでした。今後は売り方も変わるし、営業しやすくなるでしょう。

FENICS絡めPBXで巻き返す

  企業向け通信機器市場では、富士通とPBX市場を分け合ってきたNECが「UNIVERGE」ブランドで戦略的にIP事業を展開し、注目されていますが。

伊東 富士通は販売チャネルの組み方がうまくなかったかもしれません。ご存知のように、PBXは富士通アイ・ネットワークシステムズが製造・販売してきましたが、PBXはIP化された結果IT部門の管理下に入りました。したがって富士通と一緒に事業展開すべきでしたが、それが少し遅れました。
 そこで2月下旬には、エンタープライズ系の組織を1本化しました。シスコとの提携を機に、IP系の通信機器部隊200名を、キャリア向けの光通信機器やモバイル設備の開発部隊と分離し、企業ネットワークサービスのFENICSやアウトソーシング事業を管掌しているサービス事業グループの中に移しました。今後はここが富士通製のVPNルーターやIP-PBXの「IP Pathfinder」も扱いますから、これまでよりも皆さんの目に見えやすくなるでしょう。

  PBXディーラーからは「富士通の製品投入は遅い」「製品ラインナップが維持されるのか不安だ」という声も聞かれます。製品戦略を聞かせてください。

伊東 まず、なんらかのIP化を含んだPBXを中心に推進したいと考えています。どこの会社も、社内のPBXを一気にIP化することはなかなかできません。段階的に移行していく過程でレガシーPBXとの混在が生じますから、システムの互換性は不可欠です。例えばシスコのIPテレフォニーサーバーはいっぺんに全部とり換えるタイプですが、当社は既存システムとのマイグレーションを追求します。
 ただ、実際の商談を見聞きしますと、製品自体もさることながら、お客様にとっては導入後の運用が課題になってきたようです。中堅以上の企業ではIT部門がPBXやルーターも管掌するようになりましたが、そのノウハウがないため、「運用サービスも含めて一括提供してほしい」と言われるのです。富士通にはFENICSのチームがあり、組織的にも一本化されましたので、今後はそこと一緒にIP-PBX事業に注力します。

中堅企業市場にフォーカス

  国内エンタープライズ市場での販売戦略を伺います。最近IP-PBXやVoIP市場には、通信キャリアも進出してきましたが、今後はキャリアの法人営業やSI部隊との競合も起きるでしょうか。

伊東 むしろ一緒にビジネスを進める機会が増えるでしょう。すでに始まっているジョイントビジネスもあります。そうしたアライアンス展開がNECより遅れたことが、今日のシェア格差の原因かもしれません。

  その差を埋めるために、法人市場でどういう強みを打ち出していきますか。また、チャネル網はどう強化していくのですか。

伊東 ユーザーの要求が変わってきましたから、今までのやり方は通用しません。IP-PBXの場合は、コンピューターシステムと絡めて販売する必要があります。その際、狙う市場次第で販売手法は大きく変わります。
 販売チャネルの方々の関心は中堅・中小企業市場にあると思いますが、当社では「中堅TRIOLE(トリオーレ)」というインテグレーションの仕掛けを作りました。販売チャネルの方々に自慢の業務パッケージソフトを持ち寄ってもらい、事前に動作検証するのです。業務課題の一部を解決しても、ユーザーの満足は得られませんから。

  TRIOLEは富士通のミドルウェア製品をベースとするIT基盤と理解していました。中堅TRIOLEでは、ミドルウェア製品も拡張するのですか。

伊東 ゆくゆくはそうなるでしょう。ミドルウェアを含む当社のプラットフォーム製品とパートナー製品の最適な組み合わせを「Piテンプレート」の形にすることで、迅速な業務構築、システムの安定稼働、TCO削減を目指します。すでに従来のパートナー支援プログラムを拡充・強化した「パートナーアリーナ」もスタートしています。
 マーケットとしての可能性が高く、なおかつ決め打ちのソリューションパターンが見出せないのが中堅・中小企業市場です。かといって、ユーザーはサーバーやPBXや業務システムを個々に発注する余裕がありません。その答えを考えたとき、コンピューターとネットワークに加え、業務パッケージソフトがキーになると思いついたわけです。
 そこでオービックビジネスコンサルタントの「奉行シリーズ」やピー・シー・エーの「Dream21」に、富士通の販売チャネルのアプリケーションをアドオンし、サーバーに組み込んで販売することにしました。

  IP-PBXのシェアが富士通復活の一つの指標になると思いますが。

伊東 現在は22〜23%ですが、25%以上にしたいですね。盟友の芋川敏社長がアイネットで頑張っていますから、力をあわせていきます。
(聞き手・土谷宜弘)

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