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2001年7月号

シスコシステムズ:黒澤保樹 代表取締役社長
IPネットワークをコアコンピタンスに
顧客のeビジネス化の加速に貢献
IT時代に向けた人材育成も積極推進

ルーター市場で圧倒的なシェアを築き上げてきたシスコシステムズ。ブロードバンド時代の本格到来を目前にして、黒澤保樹社長は「箱売りからトータルソリューションの提供」を強調する。多様なパートナーとの提携によるアプリケーションビジネスへの取り組み、マイクロソフトとの連携によるIPテレフォニー市場への本格参入など、多方面へのビジネス拡大を図るシスコシステムズの戦略を聞いた。

Profile

黒澤 保樹(くろさわ・やすき)
1952年生まれ。73年横河・ヒューレット・パッカード入社。89年ヒューレット・パッカード、アジア太平洋地域ネットワーク・マーケティング・センタ長、92年日本ヒューレット・パッカード、コンピュータシステム事業本部マーケティング本部長、97年同社取締役就任を経て、同年10月米国シスコシステムズ インク 副社長就任。同年11月日本シスコシステムズ株式会社(現 シスコシステムズ株式会社)社長に就任。2000年4月産業構造審議会委員。

──日本でもようやくブロードバンドサービスが開始され、高速ネットワーク時代がいよいよ到来しようとしています。この現状についてどのようにご覧になりますか。

黒澤 これまでは日本はブロードバンド化に限らず、IPのインフラ構築も遅れていました。 例えば、お隣の韓国では、随分前から低価格なDSLサービスが開始されており爆発的な伸びをみせています。しかし、昨年のIT基本戦略会議では、2005年までに高速回線が3000万回線、超高速回線が1000万回線構築されることが明示されています。このように国をあげてブロードバンド化を推進していこうという方針が打ち出されましたし、キャリア各社もサービス提供に本腰を入れていますから、今年はまさに「ブロードバンド元年」になると思います。

──IT基本戦略の中ではブロードバンド化への道筋が明確に提示されましたが、この数字についてはどのようにお考えでしょうか。

黒澤 高速回線はDSLやCATV、超高速回線はFTTHを指しているのでしょうが、低価格で高速な常時接続サービスはユーザーが最も期待するものであり、間違いなく実現されると思います。
 もともと軍事技術として開発され、教育機関で利用が進んだインターネットは、商用化に伴い、企業、さらには一般家庭でも導入されるようになりました。最終的にはこれまで以上に家庭に入り込み、生活に密着したものとして使われるようになっていくでしょう。ちょうど、今の電話のようなイメージのものになると思います。そうした意味では、現在の固定電話の加入者数が6000万回線として、4000万回線以上の数字に達するのではないでしょうか。
 しかし、この数字が達成される時期が2005年までに来るのか、それよりも前倒しになるのかは、結局はコスト次第だと思います。
 これだけ技術革新が急ピッチで進めば、回線やハードウエアのコストはどんどん下がっていくでしょう。
 しかし、ここでもう1つ、コストの部分において考えていかなければいけないのが、アプリケーション、サービスの領域です。
 現在、一般家庭では日常的にさまざまなサービスを受けており、それらに対価を払っています。例えばそれは、新聞の購読や通信販売の利用などであり、ある生活水準をキープするために支払っているお金というのがあるのですね。
 インターネット上で、こうしたサービスを現在と同価格で提供できるような仕組みが実現されれば、ユーザーも対価を支払うことに抵抗を持たなくなると思います。今のインターネットのアプリケーションはテキストベースのものが主流ですが、ブロードバンド化が浸透すれば、もっと多様なアプリケーションが登場してくると思います。

──そうしたアプリケーションサービスの提供を牽引していく主要なプレーヤーは、インフラやシステムを提供するキャリアやSIなどでしょうか。それともコンテンツプロバイダーでしょうか。

黒澤 すべてのプレーヤーが関わってくると思います。ここで最も重要な点は、「IP化」によってオープンな環境が構築されているところです。すなわち、誰もが自由にアプリケーションやコンテンツを作成することが可能だということです。ですから、ありとあらゆるサービスが登場するでしょうし、相当なビジネスチャンスも生まれると思います。

──IP化やブロードバンド化によって、ネットワークシステムも大きな変革の時を迎えていると思いますが、現状ではキャリア、企業ネットワークにおいて具体的にどのような変化が生じているのでしょうか。

黒澤 まず、最大のポイントは、ベストエフォート型のIPネットワークがミッションクリティカルサービスに対応するために高度化・高機能化していることです。
 具体的にはキャリアにおけるMPLS対応と、企業におけるSNAプロトコルやVoIPをはじめとした、すべてのアプリケーションのIP化があげられます。将来的にはコンテンツ配信とモバイル通信がこのIPインフラに加わり、ネットワークはさらに進化していくと考えられます。
 個別に詳しくみていくと、キャリアにおいては、トランスポートビジネスからトランザクションビジネスへの変化があると思います。ブロードバンドの普及に伴い、伝送単価の大幅な下落が生じています。例えば光伝送の領域では、過去数年間基幹向けの利用を中心に、コストパフォーマンスが2年で4倍に推移してきましたが、ブロードバンド時代には利用者の部分にまでその技術革新効果が波及していきます。したがって旧来の伝送サービスのみで収益を維持していくことの限界が見えてくるわけですから、キャリアはトランザクションベースのサービス提供を目指しています。
 ここで鍵となるのが、やはりIPネットワークです。理由は簡単で、旧来の伝送ネットワークではすべてのサービスを共通の伝送帯域ベースでしか認識できないため、いかに付加価値を高めようとしてもできないわけですから、サービス種別は1つしか提供できなかったのです。
 これがIPインフラになると、IPの持つインテリジェンス性によって複数のサービスレベルの設定や、IPネットワーク上での新サービス開発が可能になります。その代表的な例としてコンテンツ配信があげられます。

──企業ネットワークではどのような変化が起こっているのでしょうか。

黒澤 企業においては、インターネットアプリケーションが変わってきています。  Webの利用環境の変化が端的な例ですが、ナローバンドの時代はテキストベースの情報共有が中心となっていました。今後は、社内外へのブロードバンド環境の整備とともに、インターネットを活用したEコマースや、SCM、Eラーニングなど、次世代の一段と発達したEソリューションの利用が始まります。特にIPベースに収斂されたさまざまなアプリケーションが企業ネットワーク内で取り扱われるようになりますから、初期のベストエフォート型のイントラネットとは大きく異なり、QoSやセキュリティなど高度でインテリジェントな機能が必然となります。 ──そうしたネットワークの変化に対する御社のソリューションについてお聞かせいただきたいのですが。 黒澤 キャリア向けには、主に「MPLS」と「IP+OPTICAL」を中心としたソリューションを提供しています。また、企業向けには音声・映像・データ統合のアーキテクチャである「AVVID」、「SAFE」、「Aironet」とそれぞれラインナップを揃えています。  ここでネットワークのインテリジェンス化を実現するキーコンポーネントとなるのが、ネットワークオペレーティングシステムの「IOS」です。  このIOSによって提供される共通したソリューションとしてIPv6、MPLS、CDN、VoIPを用意しています。このように、包括的なソリューションを揃えているところが、エンド・エンドのシームレスな親和性を実現している点であり、他社との最大の差別化ポイントとなっています。

IPテレフォニー市場拡大に向けパートナーとの連携進める

──御社では99年にIPテレフォニーソリューションを発表し、音声・データ統合市場に向けて積極的なアプローチを展開されてきましたが、現在のIPテレフォニーの状況についてお聞かせ下さい。

黒澤 おっしゃる通り、シスコでは他社に先駆けてIPテレフォニーソリューションを展開し、自らもユーザーとなってそれを実践してきました。実際にこの新赤坂オフィスにはPBXは設置されておらず、すべての音声通信がIP化されています。名古屋、九州など他のオフィスについても同様です。
 丸の内、新宿および大阪オフィスについては、まだPBXが設置されていますが、いずれは撤廃し最終的にはIP電話化していきます。
 IPテレフォニーによって実現される音声・データ統合の世界では、PBXや電話回線を敷設する必要がなく、LANに接続するだけで使えるようになりますから、大幅なコスト削減が可能となります。従来の電話に代わるものとして、今後、相当普及していくと思います。
 音声品質や緊急・災害時の電話連絡をどうするかといった課題も現状では問われていますが、最終的には技術が解決していくものと考えます。ですから、私は今後間違いなくすべての電話がIP化されると思っています。

──さらにIPテレフォニー分野での展開に関して、4月10日にマイクロソフトとの提携を発表されました。ここでのアドバンテージをどのように考えていらっしゃいますか。

黒澤 マイクロソフトとの提携によるAVVIDとWindows2000、ActiveDirectoryの連携は、音声通信とITの世界を真の意味で融合するものだと考えています。
 両社のテクノロジーの融合によって、オープンな環境が築かれるわけですから、アプリケーション、コンテンツといった多様な領域からのビジネス参入が予想されます。ここでも大きなビジネスチャンスが生み出されるものと考えています。

ブロードバンド化への不安は圧倒的に不足するIT技術者

──ところで、ブロードバンド、IPネットワーク時代の本格的な到来に向けて、御社は人材育成の面でも多様な資格制度、教育プログラムを提供されていますね。

黒澤 はい。シスコでは大きく2つの資格制度、教育プログラムを展開しています。
 1つは、ネットワーク構築のための資格制度である「シスコ技術者認定(Cisco Career Certification)」です。
 ここでは次世代を担う技術者の育成のためにシスコネットワークアカデミーを日本でも展開していまして、現在、大学、高等専門学校、専門学校、一部高校の全国110校でカリキュラムを提供しています。ここでは学生の方を対象に、まず、一番基本となるCCNAレベルのエンジニアの育成を進めています。
 さらに、今後はネットワークの構築のみならず、アプリケーションやサービスもソリューションとしてトータルで提供していかなくてはならない。ですからアプリケーション側からネットワークを理解できる人材を育てていかないと、今後は、顧客のニーズに応えることが難しくなると思います。
 シスコではそのためにも、インターネットビジネスモデルの普及を促進するための「エコシステムパートナープログラム」を推進してきました。これは多種多様な業界のパートナーと連携し、お互いの強みを持ち寄ることで最適なインターネット・ビジネス・ソリューションを顧客に提供することを目指すものです。
 ここでは、「シスコ・インターネット・ソリューションズ・スペシャリスト」という資格制度を用意しています。これは、インターネット・ビジネス・ソリューションをデザインし、実施していく方々の知識とスキルの向上を認定するものです。
 こうした資格、教育システムの拡充を進めているのは、今後、ブロードバンド、IPネットワークの本格的な普及を実現していくために技術者不足が課題になると考えているからです。
 日本では、ブロードバンド化に限らず、IT化を推進していくための技術者が圧倒的に足りません。ネットワークだけでなく、データベースやアプリケーションの最も高度な資格の保有者は国内では500人に満たないのではないでしょうか。今のIT戦略会議で描かれているものを実現するためには、おそらくそうした技術者を5000人くらいまで増やさなければならないでしょう。
 そのためにも、次世代を担う技術者を育てていく環境作りが必要であると考えています。
コアコンピタンスはあくまでIPネット

──御社のビジネスとアプリケーションとの関わりについてお聞かせ下さい。

黒澤 ネットワークそのものは、付加価値を生みません。その上にアプリケーションやコンテンツがあり、それらを含めたソリューションとして提供されて、初めて付加価値を生むものとなります。
 以前はわれわれもハードウエアの販売を主眼に置いてきましたが、これだけネットワークがビジネスに直結するものになってくると、顧客が抱えている問題を、いわゆるネットワークソリューションで解決していくということが重要になります。すなわち顧客側からもビジネスソリューションの提供を要求されているのです。
 そこで、シスコでは「インターネットビジネスソリューショングループ」という組織を新たに編成し、CRMやEコマースなど、シスコが自ら実践してきたノウハウをソリューションとして提供しています。

──例えば、コンピューターベンダーのようにコンサルティングを有償で行ったり、インテグレーション事業で収益を上げていくといったお考えもあるのでしょうか。

黒澤 われわれのビジネスのコアコンピタンスとなるものは、あくまでもIPをベースにしたインテリジェンスを持ったネットワークソリューションです。無論、ソリューションは重要な付加価値として顧客に提供していかなければなりませんが、その領域をカバーするためにもさまざまなアプリケーションベンダーやメーカー、SIとパートナーシップを進めています。ですから、コンサルティングは無償で行っていますし、今後もそれ自体をわれわれがビジネスとしていくつもりはありません。
 一番の強みであるIPネットワークをコアコンピタンスとしつつも、そのビジネスを拡大するためにパートナーシップ等によるソリューションの領域を広げてきたわけです。
 これだけネットワークが大規模、複雑化してきていますから、エンド・エンドでギャランティの確立されたネットワーク構築が重要となります。そこには相当のノウハウが必要です。アプリケーションも含めた、エンド・エンドでのソリューション提供を実現できていることが、シスコシステムズの最大の強みであり、他社との差別化点であると考えています。

(聞き手・伊藤秀樹)
 

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