リックテレコムWeb雑誌書籍展示会・セミナー 会社案内個人情報保護方針採用情報

テレコミュニケーションコンピューターテレフォニーCOMPASS

テレコミュニケーション

テレコミのご案内
TOPへ戻る
編集コンセプト
2012年発売号一覧
2011年発売号一覧
2010年発売号一覧
2009年発売号一覧
2008年発売号一覧
2007年発売号一覧
2006年発売号一覧
2005年発売号一覧
2004年発売号一覧
2003年発売号一覧
2002年発売号一覧
2001年発売号一覧
インタビュー集2012
インタビュー集2011
インタビュー集2010
インタビュー集2009
インタビュー集2008
インタビュー集2007
インタビュー集2006
インタビュー集2005
インタビュー集2004
インタビュー集2003
インタビュー集2002
インタビュー集2001
お問い合わせ先



広告掲載料金
広告掲載企業
2011・2012年記事広告一覧
連載記事広告一覧
2010年記事広告一覧
2009年記事広告一覧
2008年記事広告一覧
2007年記事広告一覧
2006年記事広告一覧
2005年記事広告一覧
2004年記事広告一覧
2003年記事広告一覧
2002年記事広告一覧
お問い合わせ先


セミナーのご案内
セミナースケジュール
お問い合わせ先



テレコミTOP編集コンセプト購読のご案内広告のご案内
 


2001年9月号

松下電送システム:山本亘苗 取締役社長
3つの「bps」で構造改革断行
IP事業をもう1本の柱に育てる
目標は「4年後に売り上げの5割」

FAX、複写機事業をメーンとする松下電送システムが、大がかりな“構造改革”に取り組もうとしている。7月に発表された中期経営ビジョンには、新規分野となるIP市場への積極展開、顧客志向に深く踏み込んだマーケティング戦略、ITインフラをフルに活用したスピード経営施策等々、多種多様な指針が盛り込まれている。4月から舵取り役となった山本亘苗社長に経営改革に向けた意気込みを聞いた。

Profile

山本亘苗(やまもと・のぶたね)
1969年3月一橋大学経済学部卒業、同年4月松下電器産業入社。建築エレクトロニクス部門経営企画室長、システム営業本部システムエンジニアリング部長、情報システム営業本部長などを経て、98年3月取締役に就任。99年4月、企業システム営業本部長を兼務。2001年4月、松下電送システム取締役社長に就任し現在にいたる。45年6月、三重県生まれ。

――まず、現在の経営状況からおうかがいします。6月の決算報告によれば、2000年度が単独で前年度比94%の1094億円、連結では96%の1164億円となっています。また、2001年度も単独で前年比92%の1002億円、連結で99%の1155億円という見通しを立てておられます。これはどのような要因によるものですか。

山本 2000年度実績については、複合機(WORKIOシリーズ)と家庭向けFAXは好調に推移したものの、需要が減少しているビジネス向けFAXと、複写機(アナログ式)分野が落ち込みました。それでも、国内市場では前年並みの数字を維持できたのですが、海外向けが米国のIT不況のあおりを受けて低迷したことが大きく響きました。
 また、2001年度は、普及タイプの製品を中心とした生産拠点の海外移管や採算の合わない機種の整理などを進めていくので、これらにかかるコストを換算してマイナスの見通しを立てています。

――新社長としてはやや厳しいスタートとなったわけですが、7月には業績回復に向けた中期経営ビジョン「新創生21計画」で、かなり積極的な戦略を打ち出されましたね。その概要を教えて下さい。

山本 まず、新しい経営指針として、「b.p.s経営革新」というコンセプトを掲げています。これには、3つの意味が込められています。まず、“Bit per Second=電送スピード”という語呂合わせで、市場の変化に即応しスピーディな事業展開を図ること。次に、顧客・自社のビジネスプロセス上の課題を解決していく“Business Process Solution”。3つめが販売店の方々と共存共栄で事業拡大を目指すための“Business Partnership”です。
 また、経営革新を実現するためのキーワードとして、スピード、オープンマインド、マーケティングの3つをあげ、さらにこれらを実践していくインフラとしてITを積極的に活用していきます。
 そして何よりも目玉となるのは、既存事業に並ぶ柱として、IP関連事業を早急に立ち上げていくということです。
 こうした戦略によって、経営・業務の構造改革を実現していきたいと考えていますし、業績面でも2002年度にはプラスに転じ、2005年度には連結で1800億円突破を目指しています。

秘めたるIP技術力を開放する

――御社はFAX事業のイメージが強いせいか、IP関連事業への取り組みを想像しにくいのですが……。具体的な戦略を教えていただけますか。

山本 実をいうと、私も3月まで松下電器で長い間、松下電送システムと取り引きする立場にありながらも、「松下電送システムはFAXや複写機を生業とする会社」という認識で、IP事業など思いも寄りませんでした(笑)。しかし、4月1日に社長の任に就いて、「この会社の根幹に流れているテクノロジーは、“通信”であり、それがIPにもつながっている」ということを理解しました。
 実際、当社はすでに5年前からIP関連の技術開発に着手していて、ご存知の通りインターネット対応FAXもいち早く製品化しました。また、3年前からはADSLモデムをチップレベルから開発するなどブロードバンド環境への対応も進めていますし、IPv6関連の技術にも積極的に取り組んでいます。まさに、これからの花形であり巨大なマーケットになる分野で、優れたテクノロジーと優秀な人材を有しているのです。これは多分、松下グループの中でも突出していると思います。
 ただし、それほどの実力を持ちながら世間での認知度が低いということは、アピールの仕方が下手で、積極的に売り込もうという姿勢も欠けていたということです。
 そこで、まずは当社の新しい事業を社内外に強くアピールしていくという狙いも込めて、インターネットやネットワーク技術の開発を推進してきたIPコミュニケーション事業推進部と家庭用FAXの開発・販売を手がけてきたパーソナル事業部を統合し、7月1日に「IPコミュニケーション事業部」を創設しました。

――新事業部はどんな業務を手がけていくのですか。

山本 製品ジャンルとしては、既存の電話・FAXをIP電話やインターネットFAXで利用できる「IPテレフォニーユニット」、家庭内やSOHOのあらゆる情報端末をIP網に接続する「IPv6ホームゲートウエー」、インターネットFAXで高セキュリティな通信を実現する「セキュア インターネットFAXアダプター」、さらにIPv6対応のインターネットFAXなどをすでに開発しており、今年末から来年にかけてリリースしていきます。また、家庭用FAXについてもLモード対応機種「パナファクス L1WCL」を発売したのを契機に、ブロードバンド時代のノンPC端末としてさらに進化させる計画を立てています。
 事業規模としては、約160名のスタッフで初年度150億円の売り上げを目標にしています。また、現在IP関連事業の売り上げ構成は全体の15%程度なのですが、これを2005年、すなわちブロードバンド市場が本格化するまでには50%まで高めたいと考えています。

サービス部隊に新しい仕事を

――新しい組織としては、社長直轄の「ソリューションビジネス開発センター」も7月1日に新設していますね。こちらはどのような位置付けの部門なのですか。

山本 ソリューションビジネス開発センターは、ハードからソフトにいたる新しいビジネスの創出と育成、IPや通信のノウハウを生かしたサーバー事業の立ち上げ、アライアンスの推進によるビジネス領域の拡大などが主な任務です。
 この組織を立ち上げた背景には、約1000名のサービス部隊を有効活用していくという戦略があります。
 実は、サービス部隊のメンバーの中には、ネットワークやサーバーの保守・メンテナンスも手がけられるスキルを持った人材が相当数います。にも関わらず、彼らはFAXや複写機に関するサービス業務に終始しているのが現状で、あまりにもったいない。そこで、ソリューションビジネス開発センターが新しい事業やマーケットを開拓し、サービス部隊の仕事に落とし込んでいこうというシナリオなのです。
 こうした取り組みは、これまでにもカスタマーサービス部門の中で行っていたのですが、それではスケールが小さいと考えて独立させました。そして、当社全体にとってのビジネスチャンスをつかみ、事業改革に大きく貢献できるよう、私が責任を持つ形にしたのです。

――役割の1つになっているアライアンスの推進については、どのような展開をお考えですか。

山本 当社にないものを取り込んでいくという形だけでなく、当社にあるものを活用するための手段という考え方もあり得るでしょう。また、松下グループ内での連携、社外との協業等々、アライアンスの組み方もいろいろ考えられます。いずれにしても、先進的な分野において「タブーなき大胆な提携」を進めていきたいと思っています。

――経営指針の中にあった「Business Partnership」については、どのようなことを行っ ていくのですか。

山本 第1ステップとして、販売店との情報共有を実現するネットワーク基盤「bps Web」を立ち上げます。これは、顧客情報管理システム、商品・業界情報や提案書・見積書などを提供する販売支援システム、提案スキル向上などに役立つ人材開発システムといったものを各販売店のホームページ上で活用できるようにするものです。将来的には、販売店が開発したソフトやシステムなどの製品をbps Web上で販売できる仕組みや、顧客とのEコマースを実現するシステムなどへ発展させる計画です。
 このシステムを、現在取引のある販売店約1200社に対して、まずは中核の約100社に提案し、来年3月までには500社へ拡大したいと考えています。

駄洒落で“結合力”を養う

――ところで、新経営ビジョンでは多種多様な施策を盛り込んでいますが、主だったものをいくつか紹介していただけますか。

山本 まず、すでに効果があがっているものとして、4月1日から実施している「品質11Q番」があげられます。これは、私も含めた幹部クラス約200名のメーリングリストを用意し、お客様や流通からコールセンターなどに連絡が入ると、その内容が全員に送られるもので、誰がどういう対策を打ったかということまで情報を全員で共有する仕組みになっています。ですから、いいかげんな対応や手抜きは一切できません。

――かなり厳しい制度ですね。

山本 確かにそうでしょうが、品質というものは企業の命を絶つほどの極めて大事な問題です。これをオープンにすることで、迅速な対応とリスクの回避を実現することができます。
 加えて、同じ過ちを繰り返さないように、開発・設計部隊にも情報をフィードバックできるPDM(Product Data Management)システムも導入しています。このようにお客様と開発・設計部隊を密接に結び付けることで、リードタイムの短縮と顧客満足の両方を実現できると考えています。
 このほかに、マーケティングに関する施策では、販社も含めた全世界の全社員を対象として、商品に対するあらゆる要望を「Dial-M@〜」のメールアドレスに集約し、企画に吸い上げていく「ダイヤルMを回せ」をスタートさせました。
 また、商品・事業企画のキーワードとして“ABCD”、すなわちApplication、Broadband、Concept、Designを掲げ、これに基づいて、「超越」と「挑戦」を冠に付したプロジェクトも立ち上げています。それが、超Lモード企画「T2プロジェクト」、超複合機企画「M2プロジェクト」、挑複合機企画「エコデザインプロジェクト」です。

――T2、M2は何の略ですか。

山本 T2は、ユニバーサルスタジオジャパンで松下電器が協賛している「ターミネーター2」です。ターミネーターは、技術用語で端末という意味がありますから、Lモードを超える第2世代の端末を作り出そうということです。一方のM2は「ミッションインポッシブル2」。これは、お客様のニーズを先取りした商品開発が目標なのですが、そうした時に技術者というのは得てして自分で限界を作って、つい「そんなものはできない=ミッションインポッシブル」と言ってしまうんですね。それを何としてもクリアする、しかも“パート2”なのですから、今のご要望ではなく、来るべきブロードバンド時代のご要望に応えられる商品を開発していこうということなのです。

――内容もさることながら、ネーミングの発想が大胆ですね。

山本 実は、私は語呂合わせというか、駄洒落が大好きなんです。駄洒落を「人事考課のポイントにするぞ」(笑)などと職場で奨励してきたほどです。
 しかし、駄洒落を考えるというのは、今話している言葉といろいろな物事を瞬時に結び付けるという点で、これからのビジネスに必要な力を付けていくためのよい訓練になると思うのです。製造業というのは、以前のように何でも自前で開発していくというやり方では市場の変化に対応できなくなっています。そこで、先述のようにさまざまなアライアンスによって必要なものを揃えていく、それもスピーディに行っていく必要があります。いうなれば、“総合力”ではなく“結合力”で勝負していかなければなりません。そうした時には、自社と他社の製品やビジネスをどう組み合わせるのかを瞬間的に思い付くような、柔軟な発想が求められますからね。
 もちろん、そういう堅苦しいことを抜きにして、社内の雰囲気がよくなるという効用もあります。当社も以前に比べて職場がずいぶんと明るくなりましたよ。
自ら率先して構造改革を

――構造改革の推進を社内に浸透させていくにあたって心がけていることは何ですか。

山本 一番大切なのは、自らが率先垂範していくことだと思っています。
 例えば、経営のスピード化を口にする人は少なくありませんが、まず社長自身が実践しなければ社員の意識も高まらないでしょう。そこで私は、4月2日の方針発表後に行われた新任部課長41名の任命式で、「今日発表した方針に沿って、自分がどのように仕事を進めていくかの決意表明を、250字以内で私のiモードメールに送れ」と指示しました。もちろん、全員が一生懸命考えてメールを送ってくれましたが、私はそれに対してすぐに返事を送ったのです。早いものは10分後に返しましたね。これによって、部課長レベルは私がどんな人間か理解してくれましたし、それが各部署のメンバーにも口コミで広がり、スピード化に対する共通の意識を持つようになりました。
 また、新規事業の立ち上げに関しても、飛び切りのスタッフを揃えるというだけでなく、私自身も最大の関心事として、業務の中で一番時間をかけて接するようにしています。そのために、もともとあった社長室を出て、スタッフのいるフロアにガラス張りの部屋を作ってもらったんですよ。
 そうした行動をみれば、社員の皆も会社がどのような方向に進もうとしているかを実感してくれるはずです。

――新しい経営戦略が浸透した時、御社はどのような企業になるのでしょうか。

山本 21世紀の競争を勝ち抜く“超製造業”というのが目指すべきところですね。従来、製造業は生産技術力でキャッチアップするというビジネスモデルで成功してきましたが、これからはR&Dとマーケティングが勝負のポイントになります。また、「20世紀は販売だったけれども、21世紀はサービスが主体」という言い方もできるでしょう。当社は、そうしたビジネスモデルを実践する企業になろうとしています。
 もちろん、そこまでの過程ではまだまだやらなければならないことがたくさんあります。特に重要なのは、“お客様第一”という考え方を社員全員が持つようにすることです。
「お客様を満足させる」ではなく「お客様が満足する」ものを提供する、「プロダクトアウトマーケットイン」ではなく「マーケットアウトプロダクトイン」というふうに、今までとは異なるベクトルで物事を考えていくことを徹底していきたいと考えています。

(聞き手・大谷聖治)
 

リックテレコムメール配信サービス


 
Copyright 2003-2008 RIC TELECOM,All Rights Reserved