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2003年11月号

クアルコム ジャパン 代表取締役社長
松本徹三氏
CDMAの優位性が今後20年は続く
携帯電話に新世界をもたらすBREW

CDMA2000 1xが好調だ。
この9月には、KDDI/auで1000万加入を超えている。
クアルコム ジャパンの松本徹三社長は、
「既存の施設と互換性を保った
エボリューション路線が効を奏した」と語る。

Profile

松本徹三(まつもと・てつぞう)氏
1939年生まれ。1962年京都大学法学部を卒業後、伊藤忠商事大阪本社に入社。概ね営業の第一線を歩む。この間9年にわたり米国に駐在。アメリカ会社Senior Vice President兼エレクトロニクス部長、東京本社通信事業部長、同マルチメディア事業部長、宇宙情報部門部門長代行を歴任後、1996年3月に伊藤忠商事を退社し独立。コンサルタント会社のジャパン・リンクを設立、国内外の有力企業十数社のアドバイザーなどを勤めたが、その後同社の顧客の一つであったクアルコムの専属となり、1998年4月、同社の日本法人設立とともに代表取締役社長に就任、今日に至る。  週末には、「久慈 毅」のペンネームでビジネスシミュレーション小説の執筆を行っており、主たる著書に、イントラネットを扱った「『日本の会社』大改革物語」、ベンチャービジネスを扱った「新規事業室長を命ず」(共にダイヤモンド社)等がある。

  KDDI/auが展開するCDMA2000 1xユーザーがこの9月に1000万加入を突破しました。対するNTTドコモのFOMAは現時点で100万加入。松本さんはかねてから、こうした状況を予言していましたね。

松本 2、3年前位から、かなり強い調子でCDMA2000方式の優位性を訴えてきました。それは、論理的に言って正しいという確信があったからです。KDDIは周りすべてがPDC方式という時に大変な苦労をしてcdmaOne方式を導入しました。そこを見ないで、多くの人が何の苦労もなくPDCやGSMが簡単にW-CDMAに移行できると信じて疑っていませんでした。私はその状況に大変な危険性を感じていましたので、あえて大きな声をあげ警鐘を鳴らしたかったのです。

  確かに、一時期3Gに対する期待感が非常に高かった時期がありました。

松本 期待感のレベルでなく、3G万能論がまかり通っていたのが本当です。過大な期待感と過信があったため、逆に失望も大きかったのではないでしょうか。FOMA不調の原因は、現存のPDCとは全く違う上位ネットワークとしてユーザーに訴求した点です。上位だからユーザーもより多くの通信コストをかけてくれるでしょうと。しかし、現在でも日本では月平均8000円位を携帯電話の通信費に当てているなかで、これ以上使ってくれという考え方は難しかったのです。最近はFOMAも、軌道修正を行い低廉な通信コストをアピールしていますが、これがあるべき姿でしょう。
 とはいえ、われわれクアルコムも、W-CDMAの一刻も早い立ちあがりを願っています。W-CDMAにもコミットしているということもむろんありますが、両方の方式が競争環境を形成することでマーケット全体が拡大するという考え方があるからです。また、W-CDMAで先陣を切っている日本市場の発展状況が見えてこなければ、世界各国の携帯電話キャリアが後に続かないということもあります。

“何となく良い”感覚をユーザーが支持

  auのCDMA2000 1xが好調な理由はどのような点だと分析していますか。

松本 ユーザーは、端末の基本機能を見て選択しているわけではないのです。2Gに比べ3Gになったとき、0か1で何かが新たにできるようになったということではありません。「何となく良くなったね」という評価が、じわじわとユーザーの間で広がったことが成功の大きな要因ではないでしょうか。他と比べ「何となくデータ通信が速い」「何となくつながりやすい」「アプリケーションが気持ち良く動く」「請求書を見ても卒倒することがない」といった、“何となく良い”の積み重ねが人づてに広がっていきユーザー層が拡大したのです。

  いよいよ日本でも年末にCDMA2000 1xEV-DO方式の商用化されますが、どのようなサービスが人気を集めるでしょうか。

松本 CDMA2000方式の真価はデータ通信。特に音声系のオーバーヘッドを完全に切り離しデータ通信に特化した1xEV-DOは新たな地平を切り開くものです。その中で1xEV-DOのキラーアプリケーションはどのようなものですかという質問をよく受けます。しかし、キラーアプリケーションを新たに作りだすという考え方は幻想なのではないでしょうか。1xEV-DOは、快適にデータ通信を利用できる、しかも低いコストで利用できる、そういった今まで実現できなかった環境を提供することで、多彩なアプリケーションが登場する土壌をつくりました。その中から自然にキラーアプリケーションと呼べるものが生まれる可能性がより高まったといえます。

  NTTドコモでは対抗策として2004年にHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)方式の投入を決めています。

松本 HSDPAは、W-CDMAにおける1xEV-DOという位置付けといえ、コンセプトも同様のものです。ピークレートがHSDPAの方が高いので優れているという意見を耳にしますが、これはナンセンスです。実際にユーザーの立場にたてば、大事なのはピークレートではなくいかに平均的に快適な環境を低コストで提供できるかということです。
 1xEV-DOはようやく入口にたったばかりです。将来的にはさまざまな機能拡張を考えています。例えばマルチキャリア方式を採用していますから、スペクトラム特性が合えば1xを1つのバンドの単位とし、それを複数束ねて2x、6xというように帯域を広げ通信速度を向上させることも可能です。また、設置コストの低いピコセル基地局の展開も考えられます。地下街や建物内など電波の届きにくい環境をサポートすることができるとともに、局所的に無線LAN的な利用をすることも可能になります。

レボリューションでなくエボリューション

  最近、「ビヨンド3G」「4G」という言葉が世間を賑わしていますが。

松本 これは個人的な提言なのですが、そろそろ携帯電話でも世代(Generation)という表現を使うのをやめにしたらどうでしょうか。例えば5Gの自動車というものはありません。世代という概念を重視するのは相互互換性が重要となる通信業界独特の考え方といえます。技術は日々進歩するものです。それに合わせ通信方式も進化させるというのがあるべき姿ではないでしょうか。われわれは、つねに既存設備との互換性を保つ“バックワード・コンパチビリティ”の考え方を大事にしてきました。世代が急速に変わるレボリューションでなく、ゆるやかに進むエボリューション路線こそが唯一現実的な手法だと信じています。その意味で、4Gが事業者にとって、既存の施設をスクラップにするというのであれば、それはあり得ないと考えています。
 また、技術論的に「CDMA方式が3G」「OFDM方式が4G」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、これも間違いです。CDMAには場所を選ばす移動中にも利用でき、ある程度効率的な通信ができるという利点があり、OFDMは放送など集中的に利用する場合に適しているという特徴があります。ですから、将来的なシステムとしては、「いつでも、どこでも使える」機能を担保したCDMA方式を核とし、OFDMや無線LANで補完することによって「より高速、より低コスト」という要求を満たすかたちが自然ではないでしょうか。そういう意味では、今後20年間はセルラーの世界でCDMAが使れているのではないでしょうか。

BREW生かしネットコンピューティング

  KDDIが今後標準的にサポートすることを決めるなど、アプリケーションプラットフォームであるBREWに注目が集まっています。

松本 BREWは皆さんが思っている以上に本質的なものです。これは私見ですが、現在携帯電話の上で動作するアプリケーションは多岐に渡っており、端末メーカーが1社だけでそれをサポートするのは大変な困難が伴います。一方のアプリケーションベンダーにとってもそれぞれの端末向けの開発は負担になっており、今後さらに難しくなります。統合的な環境であるBREWはそれを軽減するものです。
 また、モバイル端末は機器的な制限があり、PCと同様の運用をすることは困難です。ですから、サーバー側で処理しその結果を端末に持ってくるネットワークコンピューティングが重要になります。そのサーバークライアントシステムを効率的に運用するための手法としてBREWのプラットフォームが効果を発揮します。このトレンドでBREWの世界は、ダイナミックに変わってきます。

  クアルコムでは言っていませんが、BREWをマイクロソフトのWindows系、シンビアンとともに携帯電話向けOSとみなす向きもありますが。

松本 基本的にBREWはさまざまなOSやJavaなどの実行環境をすべてサポートしていくというのが基本方針です。そういったOSの対抗軸として捉えられることは、われわれの本意ではありません。しかし、他のOSの力を借りることなくBREW単独で、年々高度化する携帯電話の諸機能を支えることは十分に可能なことです。

2004年には法人市場が活性化

  KDDIがBREWを核とした法人向けソリューションに注力するなど、今後モバイル法人市場のビジネスの盛り上がりが予想されますが。

松本 ビジネスの世界では、いよいよ来年がモバイル元年になります。有線、無線に関わらず企業が求めるトータルソリューションを国内で唯一提供できるKDDIに優位性があるといえます。特にモバイルでは、BREW、CDMA2000 1xEV-DOなどのインフラのもとにさまざまなビジネスアプリケーションが提供されることが予想されます。

  海外市場に目を向けますと依然としてGSM方式の強さが目立ちますが、今後グローバルマーケットはどうなると見ていますか。

松本 急激には変わらないと予測しています。GSM、CDMA2000、W-CDMAが共存する環境になります。このうち、非常に多くのユーザーを抱えているGSMについては、今後1、2年は新規出荷が増えますが、その後ゆるやかに減少してくると考えられます。また、インターネット機能を加えたGPRS機能の追加が進むでしょう。ですから、われわれもBREWでGSM/GPRSをサポートするなど今度も重視する方針です。CDMA2000は順調に移行が進む反面、やはりW-CDMAは既存のGSMキャリアの移行には苦労すると思われます。

  国内マーケットをみると、auがドコモを連続して抜きシェア変動が起き始め、またドコモもPDCを上回ってFOMAが増加し、J-フォンはボーダフォンブランドに全面移行し巻き返しを図るなど目まぐるしく動いています。

松本 海外から関係者が来ると日本市場は非常に面白いと力説しています。世界を代表する携帯電話キャリア3社のユニークな展開、そしてそれをまかなうのに十分な先進的購買力があるマーケットだからです。今後どう変化していくか、大雑把な言い方をしますと市場が3分されると見ています。1つがKDDI/auのCDMA2000、さらにNTTドコモとボーダフォンについては、ハイエンドユーザーがW-CDMAに移行するものの、音声プラス基本的なインターネット機能があれば十分という相当数のPDCユーザーが残るでしょう。
 いずれにしろ、高い経営力・財務力を持つNTTドコモ、有線から無線までトータルなソリューションを提供できるKDDI、世界最大の携帯電話キャリアであるボーダフォンの3社がしのぎを削る日本は、世界で最もエキサイティングな市場であるといえるでしょう。
(聞き手・土谷宜弘)
 

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