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2004年1月号

シスコシステムズ 代表取締役社長
黒澤 保樹氏
IP電話の本当の価値は
業務改革・生産性向上にある

VoIP事業に大胆に踏み込んできたシスコシステムズの動向は、
日本のPBXメーカーの注目を集めている。
黒澤保樹社長は、業務効率化、生産性向上を実現する
“ソリューション指向”で差別化を図ると明言する。

Profile

黒澤保樹(くろさわ・やすき)氏
1952年生まれ。73年横河・ヒューレット・パッカード入社。89年ヒューレット・パッカード、アジア太平洋地域ネットワーク・マーケティング・センタ長、92年日本ヒューレット・パッカード、コンピュータシステム事業本部マーケティング本部長、97年同社取締役就任を経て、同年10月米国シスコシステムズ インク 副社長就任。同年11月日本シスコシステムズ株式会社(現シスコシステムズ株式会社)社長に就任

  IT・通信バブルの崩壊からようやく市場に回復の兆しが見え始めてきました。シスコシステムズも他社に先駆けていち早く復活しましたが、この間の市場の動きをどのように捉えていますか。

黒澤 過去の歴史を振り返れば、どんなテクノロジーの世界でも、最初のブームがはじけ、その後はじめて地に足の着いた成長期を迎える、というサイクルを辿っています。英国で始まった鉄道もそうですし、米国の自動車もそうでした。
 ネットワークも同じような経緯を辿っているのではないでしょうか。ネットバブル崩壊後の停滞期を乗り越え、今やさまざまな業界や市場で強力なネットワークの構築が再開されつつあります。よく言われるように栄えた国はその時代の最先端技術を活用して伸びてきました。今はITとネットワークがそれであることは間違いありません。
 この2年間、シスコシステムズは、「BACK TO THE BASIC」というスローガンを掲げ、まずは基本に立ち戻り、次の成長期を迎えようということでさまざまな準備を進めてきました。
 ワールドワイドでは、セキュリティソフトウェアメーカー米Okenaや、ホームネットワーク機器メーカー米Linksys、ストレージネットワーク機器メーカー米Andiamoを買収するなど、新分野への進出の準備を行ってきました。
 また、比較的新しい製品領域であるIP電話や光スイッチ製品、ストレージ等は、停滞期の中でも著しい成長を見せています。2003年度決算ではシスコ全体で、売り上げは189億ドルと前年度と横ばいながら、年間純利益は2002年度の19億ドルから36億ドルへと大幅アップを達成しました。2002年8月から始まった2004年度には「成長」を合言葉に、事業を展開しています。

  日本市場の動向はどのように見ていますか。

黒澤 日本市場を見た場合、やはり追い風になっているのがブロードバンド化です。
 3年前にはブロードバンド後進国だった日本も、現在では最も先進的な国になりました。ブロードバンド加入者も約1300万人、サービス面でもADSL、FTTHサービスの本格化に加え、100kbps当たりの単価は米国の15分の1と世界で最も低料金化が進んでいます。
 しかし、本格的なIT利用がなされるには、1300万人という数字ではまだまだ足りません。IT基本戦略会議でうたわれているように、現在の3〜4倍の規模となる4000万〜5000万人に達しなければならないと思います。
 そのためには固定系ネットワークだけではなく、ワイヤレス網を完備し、日本全国でいつでもどこでも使えるような状況を作りだすことが必要だと思います。

新事業分野も積極推進

  ブロードバンド化、ワイヤレス化が進む中で、御社の事業ドメインにも変化が生じているように思いますが。

黒澤 基本的には変わっていませんが、現在、私どもは3つの分野に注力しています。
 1つめの分野が「コア」、すなわちルーター・スイッチ製品です。これは言うまでもなく、大きな柱の1つとなっています。アナリスト等多くの人々によって、ルーター・スイッチ市場は縮小すると語られてきましたが、そんなことはまったくありません。今後、日本国内だけでも3〜4倍のブロードバンド利用者に対応できるインフラ拡張をしないといけないのですから、ますます必要になりますし、事実、私どものルーター・スイッチ製品の売り上げは非常に伸びています。
 次にサービス・プロバイダー、キャリア分野です。キャリアがサービス事業へとシフトしていく中で、各事業者が最終目的とする収益性の向上を実現するような製品、ソリューション群の提供を積極的に進めています。
 3番目が「アドバンスド・テクノロジー」と呼んでいるネットワークの新たな活用を担う分野です。ここでは、「IPテレフォニー」「ワイヤレス」「セキュリティ」「ストレージネットワーキング」「オプティカルネットワーク」「ホーム」の6つの新分野があげられます。

  3つの事業分野の売り上げ比率はどういう構成になっていますか。

黒澤 製品面でカテゴリー分けすると大きく、コアとアドバンスド・テクノロジーに分類されますが、大よそ、前者が8割で後者が2割という構成になっています。しかし、アドバンスド・テクノロジー分野には研究開発費の40%にあたる投資を行っています。ここは今後の成長が期待できる領域でもあり、将来的には両者の売り上げ比率も50対50に持っていきたいですね。

「安い、音が良い」は当たり前

  アドバンスド・テクノロジー分野の「IPテレフォニー」ですが、企業の導入が急速に進んでいます。電話市場を押えてきた日本のPBXメーカーも自社製品のIP化に積極的に取り組んでいます。今後、どこに差別化策を置いていくのでしょうか。

黒澤 電話は間違いなくIPを用いたコミュニケーションに移っていくでしょう。しかし、従来の電話やPBXを単にIP化して通信コストを下げようというだけでは、ただの「IPプロトコルを使った電話機」になってしまいます。無論、コスト削減も重要ですが、それだけではIP化による本当のメリットを享受できません。
 私どもは、最新のネットワークの技術を使うことで、電話を“新しいコミュニケーションのツール”にしようとしています。
 私どものIPテレフォニーが提供するメリットの1つに「モビリティ」があります。これは、単にワイヤレス化という意味だけでなく、オフィスでも家庭でも、ワイヤードでもワイヤレスでも、場所、手段を問わずにユーザーが同じように利用できる環境を実現していくというものです。
 例えば、この部屋には、従来の電話機と同じ形をしたハードウェア型のIP電話機があります。他方、ホットスポットで使えるような無線IP携帯電話、さらにPCにインストールして利用するソフトフォンも提供しています。どの電話機を使っても、IPによって自分の電話番号が付与できるので、私が米国に出張してPCで仕事をしているとしても、日本にいるお客様からの電話をソフトフォンでそのまま受けることができるようになりました。すなわちモビリティの確保によって、どこにいても自分のオフィスにいるのと同じように仕事ができるので、顧客への迅速なレスポンスや迅速な情報共有等、さまざまな業務上のメリットが享受でき、そして生産性向上が可能になるのです。

  IPテレフォニー分野でも、競争の焦点はコスト削減ではなく、付加価値化に移ってきたということですね。

黒澤 その通りです。かつてVoIPやIP電話は、コスト削減や音声品質が主眼とされてきましたが、今はそれは当たり前なのです。IP電話導入の真のメリットは、「新しい仕事のやり方ができるようになる」こと、つまり、仕事のプロセスが変わり、リエンジニアリングが実現される点にあるわけです。
 私どもはIPテレフォニーの拡販に際して、こうした利便性の向上を主眼にユーザーへ提案しています。従来の電話の置き換えではない、新しいコミュニケーションの可能性を理解した企業ユーザーは間違いなくシスコのIPテレフォニーを選択されています。

  付加価値向上のためには、多様なアプリケーションとの連携は必須ですね。

黒澤 そうです。シスコシステムズのIPテレフォニーは、システムインテグレーター、アプリケーションベンダー等のパートナー、さらには企業ユーザーが自由にアプリケーションを構築できるようにしています。具体的には「AVVIDソリューションパートナープログラム」というIPテレフォニーの付加価値化を向上させるためのプログラムを用意しています。これにより、スケジュール管理や受付システム、テレビ電話会議など、さまざまな付加価値アプリケーションの創出がパートナーによって実現されています。

自身のIT活用ノウハウを提供する

  シスコシステムズは高度ネットワークの導入による企業の生産性向上・業務効率化を以前から提唱してきましたが、昨年新たに「NVO(Networked Virtual Organization)」というコンセプトを打ち出しましたね。

黒澤 かつて日本企業は垂直統合型のビジネスモデルの下にすべての物事を1社で行ってきました。しかし、ビジネスのグローバル化が進む中で、そうした垂直統合型の“コストプラス型”のビジネスモデルでは競争力を維持できないため、事業の「選択と集中」が求められています。
 つまり1社ですべてを行うのではなくて、「コアコンピタンス」となる部分は残しながら、その他の部分つまり「コンテクスト」は外部に委託するという方法です。
 しかし、これまで1社でやっていた業務を複数の会社に分散することになるので、効率的な運用がこれまで以上に求められます。そのためにも高機能なネットワークが不可欠なのです。高度ネットワークを用いて、複数の企業を結び、あたかも1社で業務を行っているような「仮想的な組織」を実現するという新しい概念が、NVOなのです。
 現にシスコシステムズでは、NVOを自ら実践しています。コアでミッションクリティカルな活動は自社で、ミッションクリティカルでコンテクストな活動はシスコの厳しい管理のもとでアウトタスキングを実施し、コアであるがミッションクリティカルではない活動は通常の管理でアウトタスキングするといった使い分けによって、ワールドワイドで年間19億ドル以上のコスト削減を実現しています。
 ご承知の通り、私ども自身がネットワークやITツールを骨の髄まで活用している企業であり、そこで得た豊富な成功事例や失敗体験をソリューションとしてユーザーに提供できる、そこにシスコシステムズの強みがあると考えています。

  2004年度の経営目標はどこに置いていますか。

黒澤 シスコシステムズは「10、10、10」を目標にしています。昨年度の売り上げの10%以上の伸び、さらに目標売り上げ額の110%、そして競合他社の市場シェアのプラス10%を達成したいということです。パートナーシップの拡充に加え、IPテレフォニーやストレージ、さらにセキュリティ等の新分野を強化しながら目標を実現していきたいと考えています。
 そのためにも今後、従来の販売パートナーに加え、さまざまな方面でのパートナーシップを拡大させたいと考えています。IPテレフォニーの分野では従来PBXを販売していた通信機ディーラーとのパートナーシップを拡充させていますし、IP電話端末の開発パートナー、アプリケーションベンダーとの連携も進めています。また、アドバンスド・テクノロジーの分野でもセキュリティをはじめ、多様な付加価値パートナーを開拓していきたいと考えています。
(聞き手・土谷宜弘)
 

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