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2004年9月号

日本アイ・ビー・エム
取締役専務執行役員 開発製造担当
兼大和システム開発研究所長
内永ゆか子氏
通信業界にもソフト体系が必要
アプリ技術力が明暗を分かつ

ソフトウェア技術の優劣が製品の明暗を分ける時代に入っている。
日本IBMの内永専務は、「差別化の鍵は迅速なアプリケーション開発にある」と読み、
通信業界におけるソフトウェア体系の概念の導入を説く。

Profile

内永ゆか子(うちなが・ゆかこ)氏
1971年東京大学理学部物理学科卒業、日本アイ・ビー・エム入社。99年7月取締役、ソフトウェア開発研究所長、2000年常務取締役−ソフトウェア開発研究所長、2003年常務執行役員−ソフトウェア開発研究所長、2004年3月取締役専務執行役員−開発製造担当兼ソフトウェア開発研究所長、同年8月から現職

  携帯電話や家電は、急速にコンピューターの世界に接近しています。長年、IT業界に身を置かれた立場から、こうした傾向をどのように見ていますか。

内永 これまで携帯電話や家電はハードウェアの集合体で、ソフトウェアはそれをコントロールするものに過ぎませんでした。しかし、ハードウェアの機能が高度化していくのに比例して、ソフトウェアの役割はどんどん大きくなっています。
 この10年の間に、CPUやメモリーの性能は100倍向上しました。今や100分の1のコストで、数年前のPCと同等の機能が、携帯電話や家電製品に搭載されるようになっているのです。
 ソフトウェアの機能拡充は、これらの製品群に新しい価値を付加しています。携帯電話がインターネット接続やメール機能を備えることによって、ユーザーを爆発的に拡大できたのが好例でしょう。

  ソフトウェアがハードウェア事業に大きな影響を与え始めているのですね。

内永 そうです。その一方で、新たな課題も浮上しています。ソフトウェアの容量や設計が複雑化・肥大化し、製品開発に膨大な期間とコストが発生するようになっているのです。
 ソフトウェアの開発規模を示すLOC(Line of Cord=ソースコードの行数)は、情報家電や携帯電話の場合、度重なる機能拡張によって、20〜30%の割合で増え続けています。
 カーナビゲーションシステムを例にあげると、900万LOCに達しています。これは、IBMが提供していたPC用基本ソフトに匹敵する規模です。
 業界標準仕様が確立していない情報家電や電子機器では、これまで制御用のソフトウェアをそれぞれのメーカーが独自に開発してきました。競争が激しい環境にあり、OSやミドルウェア、アプリケーション等のレイヤ構造を未整理にしたまま、次の製品へ開発を進めてきたわけです。
 特に組込み型のソフトウェアの場合、従来は1つひとつの機能単位にプログラムコードを記述し、それらを組み合わせる手法を採用してきました。しかし、今や多機能化に伴ってコードが複雑化し、メンテナンスがとても困難になっています。
 ソフトウェア業界では「スパゲティ状態」と呼んでいますが、ソフトウェアの機能を付け加えていった結果、構造が整理されないまま、1000万LOCに近い開発を続け、コードが複雑に絡み合ってしまい、どこから手をつけてよいのかまったく分からない状態になっているのです。
 PCのようにパッチをダウンロードできないので、もしトラブルが発生したら、ソフトウェアを作り変えなければならなくなります。

  携帯電話業界では高機能化が進むなかで、ソフトウェアのバグによる製品回収が大問題になりましたね。

内永 当然、メーカー各社ではソフトウェアの品質テストを徹底的に行われていることと思います。しかしソフトの規模が大きくなるに伴い、そのコストもどんどん上がっていきます。
 テストも含めソフトウェア開発にかかる費用は、製品が売れる、売れないにかかわらず発生します。他方、製品自体は低価格化の一途を辿っています。メーカーにはとんでもないコストプレッシャーが掛っているわけです。

  ソフトウェアの構造をきちんと整理しなければいけない時期に来ているわけですね。

内永 そのとおりです。そうすれば、例えば機能追加した部分のみをテストすれば済むなど、開発にかかる期間とコストの大幅な圧縮が図れるようになります。家電業界も通信機器業界も、ここで一端立ち止まって、ソフトウェアの体系と開発のプロセスを見直すことが製品の競争力強化につながるのではないでしょうか。

技術開発をコンサルティング

  こうした状況に対して、御社はどのような支援策をメーカーに提供していくのでしょうか。

内永 IBMがOSやミドルウェアの開発で培ってきた技術と開発プロセスを日本企業の製品開発に適用していきます。ソフトウェアの開発支援を始め、品質管理等の製造過程のマネジメントノウハウの提供、さらには市場投入後の保守まで、トータルでサポートしていきます。
 例えば、IBMは全世界に研究所を持っていますが、基盤技術からミドルウェア、ハイエンドサーバーまで、すべての製品がどのようなコンセプトで、どのようなテクノロジーを使って、どのタイミングで開発されているか、すべてを相互に共有し把握できるようになっています。
 研究・開発において開発プロセスや製品プランのマネジメント、品質管理等、さまざまな経験を蓄積してきました。そのノウハウを是非活用していただきたいと考えています。

差別化はアプリケーション

  しかし、日本の大手メーカーは、製品の差別化策として、基盤技術の囲い込みを進めているように感じます。

内永 私は、OSやデバイスドライバー、ミドルウェア等、差別化の対象とならない部分は共通化したほうが良いと思います。同じ技術を多くのメーカーが利用するようになれば、開発コストを劇的に削減できますし、新しい機能やアプリケーションが開発しやすくなりますからね。

  差別化はハード部分ではなく、アプリケーションでやるべきということですね。

内永 おっしゃるとおりです。IBMは「オープンスタンダード」を提唱し続けてきました。この間、さまざまな基幹技術やAPI(Application Program Interface)を開示してきましたが、多くの方々から「IBMはいったい、どこで儲けるのか」とも言われてきました。しかし、オープン化することで、そこに参加するプレーヤーは増加します。それにより、初めて市場が広がり、ビジネスチャンスが創出されるわけです。

  確かに御社はさまざまなオープン化のためのテクノロジーを提唱してきました。最近では、通信業界で、固定網・移動網の違い、つまりネットワークインフラの違いを越えて通信サービスを自由に開発できる共通APIを規定する「Parlay(パーレイ)」の提唱団体のリーデングカンパニーになっていますね。

内永 パーレイは通信キャリアのネットワークインフラのコントロール部分に、オープン化の思想を当てはめたものです。これまでの通信サービスの開発は、きわめて閉鎖的で独自性が強く、非効率的な部分が見られました。しかし、Javaなどのオープン技術を用いることで、開発リソースが飛躍的に増加し、コストを劇的に低減することも可能といわれています。
 パーレイを採用することにより、各種サービス事業者は、キャリアのシステムに依存することなく、ユニークなアプリケーションを迅速に創り出すことができます。インターネット上でしか提供できなかったサービスを、公衆網や携帯電話網を介した複合的な付加価値サービスとして提供できるようになります。ただ、通信業界でのパーレイを用いた具体的なアプリケーションの創出は、まさにこれからだと思います。

企業向けVoIPでは提携策

  IT市場におけるシステムインテグレーターとしてのIBMの取り組みを教えてください。市場ではネットワークとITの融合が急速に進んでいますが、御社のSI事業にどのような変化をもたらしているのでしょうか。まず、キャリア向けビジネスでは。

内永 従来の回線交換網とIP網を相互に乗り入れたいというニーズがあった場合、パーレイ等のオープンスタンダード技術の利用を含め、個々のご要求にあわせて提供していきます。また、キャリアのネットワークサービスにも、当社が持つWebサービス等のソリューションを付加するなど、ご支援できる場は数多くあると考えています。

  企業向けビジネスでは、先般、音声・ビデオ・データのIP統合ソリューションの提供に際し、シスコシステムズとの協業が発表され、注目を集めています。

内永 VoIPに代表されるIP統合は、無視できない大きなトレンドの1つです。当然のことながら、システムインテグレーターとして、パートナー企業の優れた製品をソリューションに取り入れ、お客様に提供していきます。IBMのハードウェアやアプリケーションだけにこだわってはいません。シスコシステムズとの協業もその流れの1つです。

企業向けモバイルを後方支援

  移動体通信の分野では、KDDIとBREW(Binary Runtime Environment for Wireless)を活用した法人向けインフラの構築に注力されていますが、企業向けモバイルシステムに今1つドライブがかかっていないように感じます。

内永 私は、企業のモバイルシステム活用は今後増えていくと思います。
 今後、モバイルをビジネスで使う場合には、SFA(Sales Force Automation)やCRMとの連携等、サービス自体のバリューを上げることで、収益の向上が図れると思います。
 そのためには、携帯電話やPDA等、デバイスを高機能化させるだけでは不十分で、バックエンドシステムの構築とソリューションが必要です。
 例えばBREW対応携帯電話を使ってグループウェアにアクセスし、基幹システムの情報を参照できるミドルウェア「BREW Business Profile」はIBMの「WebSphere Everyplace Access」と連携するなど、成果を上げています。
 もう1つ重要なことは、ビジネスプロセス自体のインテグレーションです。いくらデバイスがネットワークにつながるようになっても、企業のビジネスプロセスそのものが寸断されていたのでは意味がありません。例えば、大掛かりな受発注システムが構築されているのに、受注伝票を手作業で起票しているケースは少なくありません。携帯電話から入力されたデータがシステム上でエンド・ツー・エンドでつながり、ビジネスプロセスフローとして流れていかなければならないのです。
 法人向けモバイルソリューションの普及にはまだまだ数多くの課題がありますが、1つひとつクリアされています。今後、ユビキタス社会の進展に伴い、間違いなく広がりを見せていくでしょう。
(聞き手・土谷宜弘)
 

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